従来の世界記録を37.5メートルも更新

スキージャンプの小林陵侑(27)が4月24日、アイスランドのフリィザルフィヤットル・スキーリゾートの雪山に特設されたジャンプ台で、291メートルの世界新記録を樹立した。

従来の世界記録253.5メートルを37.5メートルも更新する大ジャンプ。2022年北京冬季五輪の男子ノーマルヒル金メダル、ラージヒル銀メダル、ワールドカップで日本人男子最多の通算32勝を誇るエースがついに打ち立てた金字塔だ。

しかし、国際スキー連盟(FIS)は、規定に沿った競技条件下で行われていないため、世界記録として認定しないと発表。2017年にオーストリアのシュテファン・クラフトがマークした253.5メートルはFISが認定している。

2年間の調査を経て特設された小林専用ジャンプ台

そもそも今回のプロジェクトは小林の記録達成のために入念に準備されたものだった。

特設ジャンプ台は2年間の調査を経て、アイスランドの雪山に2カ月以上かけて建設。標高1115メートルのスタートから高低差は360メートル、最大36度の勾配で下降する。通常のラージヒルのジャンプ台は約140メートル、フライングヒルでも185メートルだから、いかにとてつもないスケールかが分かる。

もちろん、強靭な肉体と高い技術、並外れた精神力が必要なため、小林選手は2023年からオーストリアにあるレッドブル・アスリート・パフォーマンス・センターなどでトレーニングを積んできた。

8秒間飛行「夢が叶いました」

今回は4月23日に256メートルの世界新記録を樹立し、その後も259メートル、282メートルと次々に記録を更新。24日に達成した291メートルの大ジャンプは、テイクオフする瞬間の最高速度が約107キロに達し、空中を約8秒間飛行した。

小林は「長年の夢でした。誰よりも遠くへ飛んでみたいと常に思っていましたし、スキージャンプの限界を押し広げ続けたいと考えていました。今まで経験したことのない規模感でした。最高のチームに恵まれ、夢が叶いました」と語った。

小林は2019年3月24日に行われたワールドカップ個人最終戦の1本目で、世界歴代2位タイの252メートルという最長飛躍距離を記録している。今回はFIS非公認とはいえ、自身の記録をも大幅に塗り替える最長不倒となった。

 

 


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