3連単973万円の大波乱

今週はNHKマイルCが開催される。昨年は9番人気シャンパンカラーが優勝、馬連は129.9倍の万馬券となった。

シャンパンカラーの単勝オッズは22.2倍で、これはレース史上6番目に高いオッズでの勝利だった。勝ち馬の単勝オッズのトップ3を振り返ってみると、第3位が2013年のマイネルホウオウ。単勝オッズは34.3倍、馬連も218.9倍の波乱決着となった。

鞍上の柴田大知騎手にとってはこれが平地GⅠ初制覇。同騎手は2011、2012年に中山グランドジャンプを制していたため、障害と平地でGⅠ級競走制覇という偉業を成し遂げたことになる。

続いて歴代2位が39.8倍で勝利したジョーカプチーノ。2009年の勝ち馬で、デビュー9戦目のGⅠ制覇であった。鞍上はデビュー3年目の藤岡康太騎手。これがGⅠ初制覇だった。

ジョーカプチーノはその後も何度も藤岡康太騎手とのコンビで重賞に挑戦。2011年のシルクロードSで勝利を挙げたほか、スワンS3着などの戦績を残し、引退レースも同コンビで走り抜いた。

先日の落馬事故でこの世を去った藤岡康太騎手だが、ジョーカプチーノをはじめ多くの馬とともに名勝負を演じた。この場を借りて、改めて、ご冥福をお祈りさせていただきたい。

そして、最も波乱の決着となったのが2007年。勝ち馬ピンクカメオの単勝オッズは76.0倍。18頭中の17番人気で、2着には1番人気のローレルゲレイロが粘ったものの、3着には18番人気のムラマサノヨートーが食い込み、三連単は97398.7倍、つまり970万円超えの大波乱となった。

同じマイル戦の桜花賞では14着と大敗を喫しながら逆襲を果たしたピンクカメオは、強行日程で挑んだオークスでも5着と好走。引退が近付いた5歳春にも中山牝馬Sで逃げて15番人気2着と粘りこみ、三連単13943.7倍の波乱を巻き起こしている。


歴代最大タイム差勝ち、次走でダービー制覇のキングカメハメハ

NHKマイルCといえば、ここを制して日本ダービーへと向かう変則二冠に挑む馬も多い。上述した3頭も、牝馬のピンクカメオはオークスに進んだが、マイネルホウオウとジョーカプチーノはダービーへ挑戦。それぞれ15着と18着に敗れている。

過去にNHKマイルC→ダービーの変則二冠を達成した馬は2頭。キングカメハメハとディープスカイである。

キングカメハメハはデビューから5戦4勝でNHKマイルCに挑戦。唯一の敗戦は京成杯の3着のみで、続くすみれSと毎日杯は余裕の勝利。馬体重プラス2kgで挑んだNHKマイルCでも、シーキングザダイヤやメイショウボーラー、コスモサンビームといった素質馬たちを抑えて単勝3.6倍の1番人気に支持された。

レースでは9番手付近から直線で一気に加速すると、後続をグングンと引き離して完勝。その差5馬身、タイムにして0.8秒差というNHKマイルCにおける最大タイム差での勝利だった。

この記録に次ぐ歴代2位の着差をマークしたのが、2012年のカレンブラックヒル。デビューから無傷の3連勝で挑み、ジャスタウェイらを相手に快勝を収めた。2着馬アルフレードとの着差は3馬身半、タイム差は0.6秒だった。

カレンブラックヒルは同年秋に毎日王冠も制覇。天皇賞(秋)で5着に敗れて連勝がストップすると、そこからダートGⅠフェブラリーSに直行。初ダートながら1番人気となるなど話題を集めた。

ちなみに、歴代3番目の着差は0.3秒。こちらは6頭が並んでいて、上述の変則二冠馬ディープスカイをはじめ、後の凱旋門賞2着馬エルコンドルパサー、フランスや香港へ遠征したテレグノシス、牝馬のシーキングザパールやラインクラフト、そしてジョーカプチーノがいる。どの馬も歴史的名馬だ。

今年のNHKマイルCは朝日杯FS勝ち馬ジャンタルマンタル、阪神JF勝ち馬アスコリピチェーノが揃って参戦するなど、楽しみなメンバーが揃った。将来性豊かな素質馬が強い勝ち方を見せるのか、それとも伏兵がアッと驚く大波乱を巻き起こすのか。いずれにしても見逃せない一戦となりそうだ。

ライタープロフィール
緒方きしん
競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、エアグルーヴ、ダイワスカーレット。

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