◇交流戦 ソフトバンク2−0阪神(2024年6月14日 みずほペイペイD)

 ソフトバンクのドラフト3位ルーキー、広瀬隆太内野手(23)が14日、阪神戦でプロ1号を放った。5回2死二塁で左越え先制2ラン。記念のアーチが決勝弾となった。この回はプロ初スタメンの笹川吉康外野手(22)がプロ初安打、初盗塁で好機を演出した。若い力が爆発したチームは2連勝で両リーグ40勝一番乗り。貯金を今季最多22とし、交流戦優勝の望みもつないだ。

 ベンチ前で小久保監督やナインとハイタッチを交わすと笑顔が弾けた。0―0で迎えた5回、ドラフト3位ルーキー・広瀬のバットが快音を響かせた。

 自他ともに認める“悪球打ち”。得意の高めに来た伊藤将の直球系を捉えた。大歓声とともに左翼テラス席にプロ第1号を運んだ。笹川がプロ初安打、初盗塁を決めた直後の一発。「笹川がヒットと盗塁でチャンスメークして、いい流れをつくってくれた。その勢いで思い切ってスイングすることができた。2軍で一緒に頑張ってきた仲なので」と満面の笑みを浮かべた。

 慶大では東京六大学リーグで歴代4位タイの20本塁打を放ったスラッガー。スイングスピードもチーム上位。それでも今は打席での心境について「大学の時は自分がホームランを打ってチームを勝たせる打撃が必要だった。今の自分はその役割ではない。塁に出ることが求められることだと思う」と口にする。2軍でも来た球に対して逆らわずに打つことを意識してから打撃の状態が上がっていった。

 もちろん、本塁打への思いは持ち続けている。「今はまずはヒットに意識は置いていますが、いずれは本塁打王を獲れるような選手を目指しています」。早大時代に東京六大学で20本塁打を放った阪神・岡田監督の前での一発に「プロでも並べるくらい本塁打を打てるように頑張りたいです」と力を込めた。

 バットは中日・ビシエドにもらったものだった。ウエスタン・リーグで自分のバットに形状が似ていたものを使っていたため、頼みこんでもらったのが最初だった。4日の中日戦でプロ初安打を放つと、もう1本プレゼントされた。広瀬はビデオメッセージでお礼を伝えた。「ビシエドさんにもらったバットでホームランを打てた。感謝してます」。

 若手の活躍で貯金は今季最多22。両リーグ40勝一番乗りで、60試合目での到達は16年に並んで89年の福岡移転後最速タイだ。交流戦通算勝利は12球団最速で250勝に到達。右のスラッガーが大きな第一歩を踏み出し、メモリアル勝利を演出した。(木下 大一)

 ◇広瀬隆太(ひろせ・りゅうた)プロフィル

 ☆生まれ&サイズ 2001年(平13)4月7日生まれ、東京都東久留米市出身の23歳。1メートル81、88キロ。右投げ右打ち。

 ☆慶応一筋 慶応幼稚舎1年時に「東久留米ハッピーズ」で野球を始める。慶応では2年春、夏に甲子園出場で高校通算41本塁打。慶大では1年春にリーグ戦デビューし、3年、4年時に侍ジャパン大学日本代表入り。リーグ通算歴代4位タイの20本塁打。

 ☆慶応の裕次郎? 指名あいさつで福山龍太郎アマスカウトチーフは「幼稚舎からということで品のある顔。昔のスターみたい」とスマートフォンで石原裕次郎を検索。写真を見せられた広瀬は「まゆげはチャームポイントだと思います」とニッコリ。

 ☆性格 慶応―慶大で広瀬の2学年先輩だった正木は「(広瀬は)わがままで甘えん坊。自分を持ってて、わんぱくです。慶応では“ビッグ・ベイビー”と呼ばれてました」