プロ野球2024
真中満インタビュー第3回(全4回)
スワローズ戦力分析・野手編

3月29日、いよいよプロ野球が開幕。解説者の真中満氏にセ・パ両リーグの順位予想を聞いた第1回、第2回に続き、今回は古巣である東京ヤクルトスワローズの今季の戦力を分析してもらおう。まずは野手編。真中氏が考えるベストオーダーやキーマンを聞いた。

【2024年スワローズベストオーダーは?】

ーー2021年は日本一、翌2022年は日本一こそ逃したものの、セ・リーグ連覇を実現。しかし、昨年はまさかの5位に終わってしまいました。あらためて、OBである真中満さんに、「2024年の東京ヤクルトスワローズ」について伺いたいと思います。まず、攻撃陣についてお願いします。

真中満(以下同) 中心となるメンバーとしては、昨年までとほぼ変わっていませんよね。髙津臣吾監督は常々「4番は村上宗隆」と明言していますから、それは今年も変わらないはず。

 注目は山田哲人を何番で起用するかということですね。昨年まではずっと「3番・山田」にこだわっていた髙津監督も、オープン戦では1番、2番、6番と、いろいろな打順を試していましたからね。昨年までのように3番を打たせるのか、それとも6番あたりを任せるのか?


真中氏が今季の打順に注目する山田哲人 photo by Kyodo News

ーーたしかに、山田選手の調子を見ながら柔軟に変えていく様子も見受けられますね。真中さんは、山田選手の打順は何番がいいと思いますか?

 う〜ん、難しいな。要は、オスナ、サンタナ両外国人が来日4年目を迎えて、完全にめどが立ったことで、山田を何番に置いてもいいという状況が確立したんだと思うんです。

 だから、オスナ、サンタナの調子を見ながら、流動的に山田を3番で起用したり、あえて6番で使ってみたり、いろいろなことが可能になるはず。いずれにしても、3番候補が3人も、4人もいるんだから、監督としてはうれしい悩みですよ。

ーーあらためて、真中さんが考える「2024年スワローズベストオーダー」を教えてください。

 僕が考えるベストメンバーは、こんな感じかな?

1番・塩見泰隆(センター)

2番・西川遥輝(ライト)

3番・オスナ(ファースト)

4番・村上宗隆(サード)

5番・サンタナ(レフト)

6番・山田哲人(セカンド)

7番・中村悠平(キャッチャー)

8番・長岡秀樹(ショート)

 ポイントは山田の6番ですね。ランナーがたまっている場面で山田に回ってくる。そこできちんと返すことができれば、チームとしての得点力はさらにアップしますよね。

【西川遥輝の加入で攻守ともにチーム力アップ】

ーー今年も臨時コーチとしてスワローズキャンプで指導されましたけど、昨年は不振に苦しんだ山田、村上両選手の状態はいかがでしたか?

 山田も村上もコンディションは、昨年よりもよかったですよ。ふたりとも開幕シリーズで、少なくとも各球団とひと回りするまではまだ様子見の部分もあると思うけど、いいスタートを切ることができれば、かなりの爆発が期待できると思います。

ーー村上選手についてですが、「今年は三冠王を獲る」と宣言しています。この点についてはどう見ています?

 村上だからみんな期待しているけど、やっぱり三冠王は大変ですよ(苦笑)。実際に2回目の三冠王を獲得するかどうかと言えば大変だと思います。だけど、間違いなく今年はコンディションがいい。

 来年オフのメジャー行きを見据えているようだし、今年、来年はそれがモチベーションにもなる。きちんと成績を残すと思いますよ。


今季のヤクルトを占った真中満氏 photo by Tanaka Wataru

ーー若手で気になる選手はいましたか?

 沖縄・浦添キャンプでは若手を中心に見ていたんですけど、やっぱり濱田太貴、内山壮真にはさらにひと皮むけてほしいと思っています。毎年見ているけど、彼らのポテンシャルは図抜けています。

 オープン戦では西川の調子がいいので、しばらくの間は「ライト・西川」でいくと思うけど、僕は内山でも、濱田でもライトで使っても面白いと思いますね。

ーー今、話に出た西川選手はいかがですか? オープン戦ではかなり躍動していました。

 足を使える選手が加入したことがすごく大きいと思います。打撃面で言えば、「1番・塩見、2番・西川」なら攻撃の幅が広がるし、何でもできる。

 守備面で言えば、「センター・塩見、ライト・西川」でかなり守備範囲も広がる。さらに、まだまだ足も衰えていないので、盗塁で相手をかき回すこともできる。いい補強だったと思います。

ーー先ほどのスタメン予想を見る限り、セ・リーグ屈指の最強打線の予感がプンプンします。でも、一方では負傷者が出た場合の層の厚さ、薄さも懸念事項としてあります。

 現状、攻撃陣では目立った負傷者がいないのが幸いだけど、もちろん長いペナントレースにはいろいろなことがあるので、控え野手を鍛えることが重要です。だけど、最初に言ったように、今年は山田が6番を打つかもしれないほど充実しているのも事実。

 名前を挙げた濱田、内山のほかにも武岡龍世も赤羽由紘もいる。ベテランの青木宣親、川端慎吾は今年も元気そうです。僕は打線に関しては何も心配していないです。心配なのはやっぱり投手陣ですよね。

【「打って、打って、打ちまくる」勝ち方を目指す】

ーー投手陣については次回でじっくりと伺いますけど、昨年はリーグ2位となる534得点を記録しました。今シーズンはさらなる上積みはありそうでしょうか?

 もちろん、さっきも言ったように主力がみんないい状態で開幕を迎えられそうなこと、西川の加入で足を使えるようになったこともあるので、得点力はアップすると思います。何度も言うけど、打撃陣には何も心配していません(笑)。

ーー一般論になりますが、相手投手やデータに応じて、打線を柔軟に変えていったほうがいいのか、それとも昨年のタイガースのように固定メンバーで臨んだほうがいいのか、この点はいかがですか?

 それは一概には言えないですね。基本的には、打線がきちんとつながって点がとれる状態であれば、わざわざ打順をいじる必要はないし、なかなかつながらずに結果が出ない時には、データを重視して打線をいじることも必要になってくるし。

 ただ、今年のスワローズ打線について言えば、誰がどの打順でもきちんと結果を残せるので、相手投手を見ながら、あるいは自軍の打者の調子を見ながら、いろいろ変えてみても面白いと思います。

ーー先ほどから「投手陣が不安だ」とのことですが、そうなると、今年のスワローズは打って、打って、打ち勝つ野球を目指す必要がありそうですね。

 まさに、今年のスワローズが優勝するならば、そういう勝ち方しかないと思います。序盤でパン、パンと点をとる。できれば大量点が理想だけど、試合序盤で主導権を握ってピッチャーの負担を軽くすること。

 もちろん、相手チームのエースが出てきたら、いくら強力打線でもそう簡単に打ち崩すことはできないけど、それでも「打ち崩す」という姿勢が大切。とにかく打席では粘り強く臨んでほしいですね。

ーー真中さんのお話を聞いていると、「今年のスワローズ打撃陣は安心だ」という気持ちになってきました(笑)。

 本当に大丈夫ですよ。順位予想では多少の忖度込みで2位予想としたけど、打撃陣に関しては忖度ナシで「セ・リーグナンバーワン」だと言えますから(笑)。

ーー次回は、投手陣について伺います。

最終回<ヤクルト先発投手陣は「いくら考えてみても苦しい...」 真中満が「12勝」を期待するキーマンは?>

第1回<【真中満のセ・リーグ順位予想】巨人は「Bクラス」も打倒・阪神の「一番のダークホース」 中日、ヤクルトは躍進>

第2回<【真中満のパ・リーグ順位予想】西武が大躍進にソフトバンクは「Bクラス」...オリックスの「山本由伸の穴」は不安なし>

【プロフィール】
真中満 まなか・みつる 
1971年、栃木県出身。宇都宮学園、日本大を卒業後、1992年ドラフト3位でヤクルトスワローズに入団。2001年には打率.312でリーグ優勝、日本一に貢献した。計4回の日本一を経験し、2008年に現役引退。その後、ヤクルトの一軍チーフ打撃コーチなどを経て、監督に就任。2015年にはチームをリーグ優勝に導いた。現在は、野球解説者として活躍している。

著者:長谷川晶一●取材・文 text by Hasegawa Shoichi