Juju(野田樹潤)インタビュー後編

◆Juju・前編>>18歳の挑戦「経験値が圧倒的に低いのはわかっている」

「F1に次ぐ速さ」と言われるスーパーフォーミュラのマシンを操る18歳のJujuこと野田樹潤。史上最年少でデビューを果たした開幕戦では、モータースポーツ関連以外のメディアも多く押し寄せ、今までにない雰囲気が鈴鹿サーキットを包み込んだ。

 Juju人気をさらに高めている要因のひとつが、愛くるしい笑顔と身長170cmのスタイルでファンを魅了する、モデルのようなルックスだ。稀有な存在の彼女をメディアが放っておくわけはなく、今年に入ってからテレビや雑誌の取材も殺到している。

 ふだんは生活の9割以上をレースに優先させているというJuju。インタビュー後編では、貴重なプライベートのエピソードも聞いてみた。

◆Juju「18歳の素顔」プライベート姿をスタジオ撮り下ろし>>

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Jujuは今年から大学生になった18歳 photo by TOBI

── 今回の取材では、ふだんのナチュラルな私服姿を撮影させてもらいました。今年から大学生になりましたが、ファッションやメイクに興味はありますか?

「服や靴は好きです。いつもお店では、選ぶのにけっこう時間をかけたりしますね。ただ、サーキットにいる時はチームのウェアを主に着ているので、そこでファッションを楽しむということはないですね」

── 食べ物への興味は?

「あります。和食が好きなんです! お味噌汁とか納豆とか、いいですよね。食べ物は渋い系が好きで、たとえばお寿司のネタだと貝とかが好き。ヨーロッパに行くと、そういったものがなかなか食べられないので、あらためて『私って日本食が好きなんだな』と感じました(笑)」

── 中学2年生の頃からヨーロッパのレースに参戦していましたが、学校の勉強はどうしていたんですか?

「オンラインの動画で授業を受けていました。(ヨーロッパと日本では)時差があるので、リアルタイムでのオンライン授業は受けられなかったですけど、録画している動画を撮ってもらって、それを見ながら問題を解いたりしていました。課題も送られてくるので、それをレースの合間にこなしていました」

【大学生になったので友だちが増えたらいいな】

── 昨年までヨーロッパにいる時間が長かったので、日本の友だちと遊ぶ機会も少なかったのではないですか?

「昨年は特に、友だちと会う機会が少なかったですね。年に1回くらい会えたらいいなっていう感じです。地元の岡山にも帰ることがほぼなく、今年も2日間しか帰っていないです」

── 休日に友だちと集まってカラオケや映画に行くといった遊ぶ時間もないですね。

「ほとんどないですね。でも、この前は久々に友だちと映画を観に行きましたよ! 今年から大学生になって日本大学に通うことになるので、友だちが増えたらいいなと思います」

── 今ではSNSも普及していて、友だちの休日の様子などもチェックできます。そういうのを見て『うらやましいな』と思ったりはしないのですか?

「昔はありましたね。中学生の頃は修学旅行など、学校行事でみんなが盛り上がっている一方、私はそういうのに参加できなかったので、『ちょっと行きたかったな......』と思ったこともありました。

 父は『その日は練習があるけど、修学旅行に行きたかったら行ってもいいよ』と言ってくれていました。でも、自分が修学旅行に行っている間に、ライバルが練習している可能性もあります。逆にライバルがその時に練習してなかったら、そこで差を広げるチャンス。『やっぱり、自分がすべきことはサーキットに行って練習をすることだ』と自分に言い聞かせ、納得させていました。

 でも、頭ではわかっているんですけど、やっぱり学校行事に行きたかったな......という気持ちはありましたね。

 でもここ最近は、自分が好きなことを一生懸命にやれて、それを中心に人生を送れているのはすごく恵まれていることだなと、あらためて思うようになりました。だから、今はこの生活をすごく楽しんでいます」

── たまの休日にはレースのことを忘れて、何か気分転換になることをしていますか?

「動物がすごく好きで、うちに犬が6匹、猫が3匹いるんです。その子たちと遊んでいる時は、レースとはまた違う部分で楽しいですね。ほんとに癒されます(笑)。

 その子たちと遊んでいると、レースのことも考えずに過ごすことができます。そういう時間があるからこそ、レースにも集中できるんだと思います」

【女の子でもできるんだ!って思ってもらえれば】

── レースを続けていて、つらくなる時はありますか?

「いいえ。レースが終わると『早く次のレースが来ないかな?』と考えているくらいなので。もちろん、苦しいと思う時もあります。だけど、シーズンオフにレースができない時間が長くなると、『早くレースがしたいなぁ』と毎回思うんですよね」

── スーパーフォーミュラへの参戦が決まってから、どこの現場に行ってもメディアに囲まれる環境になりました。

「今まで以上にメディアの方に取り上げていただいて、すごくありがたいことです。スーパーフォーミュラは大会期間中のスケジュールがギチギチに詰まっているので、メディア対応で十分な時間が取れずにバタバタさせてしまって申し訳ないなって思う時もあります。

 シーズン直前のテストや3月上旬に行なわれた開幕戦は、お昼ご飯を食べる時間すらないくらい忙しくて......。ファンの方に対しても時間が取れなくて、本当に申し訳なかったです」

── レースのことを集中しながら、同時にファンやメディアのことも考えているのですね。

「こうしてメディアの方に取り上げていただくことで、モータースポーツという世界がもっと広く認知されるようになってほしいなと思っています。

 私を通してモータースポーツに興味を持っていただければうれしいですし、レースに参戦している姿を見て『女の子でもできるんだ!』『小さい頃からでもできるんだ!』と思ってもらえれば。

 女の子にとっても、将来の選択肢のひとつにモータースポーツが入るきっかけになったら、すごくうれしいなって思います」

── Juju選手はこれまでフォーミュラカーのレースを中心に戦ってきました。今後はスーパーGTなど『ハコ車』のレースへの興味は?

「まったくないわけでは、もちろんないです。レース自体が好きなので、出られるチャンスがあるのであれば、いろんなものに乗りたいという気持ちはあります。ただ、今の自分が目指すところはフォーミュラのトップであるF1なので、そこに向けてがんばっています」

【負けてもあきらめなかったら成長のチャンス】

── 日本大学の入学式の際、『負けても負けても諦めない』という座右の銘を色紙に書いていました。その言葉を選んだ理由を教えてください。

「もともと負けず嫌いというか......。小さかった時、カートのレースで負けた時は周りが手をつけられないぐらい泣きわめいたりしました(笑)。

 その時、父が『世界でチャンピオンを獲っているドライバーも、負けたレースのほうが多いし、負けることは悪いことじゃない。でも、負けた時に諦めたら、それはただの負けになってしまう。負けても諦めなかったら、その負けは自分を成長させてくれるチャンスになるからね』と話してくれたんです。

『負けても負けても諦めない』という言葉は、本当に小さい時からずっと言ってきました。今もすごく大事にしています。前回の自分の心に負けそうになった時、何か壁にぶつかった時に、『負けても負けても諦めない』という言葉を常に意識しています。

<了>

◆Juju「18歳の素顔」プライベート姿をスタジオ撮り下ろし>>


【profile】
Juju 野田樹潤(のだ・じゅじゅ)
2006年2月2日生まれ、東京都出身・岡山県美作市育ち。元F1ドライバーの野田英樹の次女として生まれ、3歳からカートに乗る。9歳でフォーミュラカーを運転して非凡な才能を見せるも、国内の年齢制限によって上位カテゴリーへのステップアップが困難となり、2020年から家族とともにヨーロッパに渡ってレース経験を積む。2023年はF1の登竜門であるユーロフォーミュラオープンで女性初の優勝を飾り、ジノックスF2000では年間王者に輝く。2024年よりスーパーフォーミュラにTGM Grand Prixから参戦。身長170cm。

著者:吉田知弘●取材・文 text by Yoshita Tomohiro