今中慎二が語る今季の中日 後編

(前編:フォアボールで炎上の中日ピッチャー陣の課題を指摘「ゾーンで勝負することを再度徹底すべき」>>)

 今中慎二氏に聞く今季の中日の後編。4月20日の阪神戦から23イニング連続無得点など、中田翔が加入も相変わらず得点力に苦しむバッター陣の課題について聞いた。


中田翔の加入も、得点力不足は改善されていない中日 photo by Sankei Visual

【田中幹也は「機能している」。岡林勇希は「物足りない」】

――バッター陣は昨季との違いとして、やはり中田翔選手の存在は大きいですか?

今中慎二(以下:今中) 大きいですし、昨季のスタメンと今季のスタメンはほぼ違うメンバーですよね。中田以外にも三好大倫や田中幹也がいて、山本泰寛や上林誠知が出たり。昨季から引き続きスタメンで出ているのは、木下拓哉や細川成也、高橋周平ぐらいでしたよね。残念ながら、周平はケガで離脱してしまいましたけど。

 それと、立浪和義監督は「センターラインのセカンド、ショートが重要」と言っていましたが、田中がセカンドで頑張っていますし、ハマりつつあるのかなと。ショートはまだ臨機応変に、という感じでしょう。

――田中選手のここまでの働きはいかがですか?

今中 守備力を重視して起用していると思いますが、バッティングも最近は少しずつヒットが出始めました。右方向にも打てますね。打席での粘りや犠打も含め、2番として機能している印象です。

――右肩の炎症で出遅れていた岡林勇希選手は、一軍に復帰して以降、あまり結果が出ていません。

今中 実績があるから復帰後すぐにスタメンで起用したと思いますが、本調子ではありません。現状はスイングに力強さがない。阪神との3連戦を見ても淡泊というか打球にも力がないですし......。復帰するまでは主に三好を1番で起用していましたが、岡林が復帰して三好を控えに回しましたよね。

 それも、三好が全然打てなかったわけではなく、不調の時期を経てちょっと打ち出したタイミングでした。4月24日の巨人戦では三好を1番・センター、岡林は6番・ライトで先発起用しましたが、翌日はまた岡林が1番だった。岡林が万全で一軍に上がってきているならそれでいいと思いますが、あの内容だと物足りないですよね。

【阪神打線に見習うべき点】

――高橋周平選手が故障で離脱しましたが、サードの穴はオルランド・カリステ選手を中心に埋められる?

今中 カリステはヒットも出ていますし打撃はいいんですが、周平と比較すると守備力は劣ります。チームが好調な時は周平の守備力でだいぶ救われていた。守備は重要ですし、その点がちょっと痛いです。ただ、阪神戦では山本泰寛もサードに入っていましたし、チーム力でなんとかカバーしていけそうですけどね。

――昨季はチームの得点圏打率がリーグワーストの.229。今中さんも課題に挙げていましたが、今季はリーグ3位の.245(4月25日時点。以下同)です。

今中 チーム打率もそこそこいいんですよね(リーグ2位の.239)。ただ、これも昨季からの課題なのですが、フォアボールを取っていかないといけません(チーム四球数はリーグ5位の38個)。今は2ボールのバッティングカウントで打ちにいっても、凡打やファウルになることが多い。ややボール気味でも強引に振ってしまうこともありますね。

 積極的と言えば聞こえはいいですけど、ボール球を振ってしまうのはなんとかできないものかと。逆に、そこを改善できれば打線も変わると思います。

――何かを大きく変える必要はない?

今中 そうです。狙い球を絞るのであれば、そのボールが来たら打ちにいけばいい。でも、狙いと違うボールが来ているのに強引に打ちにいってしまうんです。追い込まれたカウントであればわかりますが、追い込まれる前にそれをやるとピッチャーを助けてしまいます。

(4月19日〜21日で)中日に3連勝した阪神打線がよかったのは、ボールゾーンの球をほとんど振らずに我慢していたこと。フォアボールも取れますし、昨季の阪神もそうでしたが、いい時の阪神に戻った感じがありました。中日のバッター陣の課題を阪神から教えてもらった形ですし、見習うべきでしょうね。

――開幕から約1カ月が経ち、各チームの戦力や戦い方がある程度わかってきたと思いますが、中日にとって手強いチームは?

今中 やっぱり阪神です。阪神をなんとかしなければいけないのは、ほかのチームも同じじでしょう。昨季はどこもやられていて、力の差が出ていましたから。それと、「巨人はピッチャーで苦労しそうだな」と見ていたのですが、ルーキーの西舘勇陽がいいボールを投げていますし、予想以上にピッチャー陣が頑張っていますね。

 ただ、中日としてはほかのチームを気にせずにまずは立て直すこと。中日は連勝をしたあとに連敗をして、どうやったら連勝できるのか、どうやったら連敗してしまうのかがわかったと思うので、その点はよかったかもしれません。ピッチャー陣の課題はフォアボールを減らすことですが、バッター陣の課題はボール球を見極めることだと思います。

――まずはピッチャー陣に踏ん張ってもらい、僅差の展開に持ち込みたいところですね。

今中 ピッチャー陣が不調だった理由は主にフォアボールの多さで、そこが明確になっているのですぐにいい状態に戻ると思っています。柳裕也や小笠原慎之介あたりがビシっと投げれば、打線も含めてまたいい流れに乗っかっていくはず。阪神との3連戦でコテンパンにやられたことが、いい方向に進むきっかけになればいいですね。

【プロフィール】

◆今中慎二(いまなか・しんじ)

1971年3月6日大阪府生まれ。左投左打。1989年、大阪桐蔭高校からドラフト1位で中日ドラゴンズに入団。2年目から二桁勝利を挙げ、1993年には沢村賞、最多賞(17勝)、最多奪三振賞(247個)、ゴールデングラブ賞、ベストナインと、投手タイトルを独占した。また、同年からは4年連続で開幕投手を務める。2001年シーズン終了後、現役引退を決意。現在はプロ野球解説者などで活躍中。

著者:浜田哲男●取材・文 text by Hamada Tetsuo