5月5日(日)、東京競馬場で3歳馬によるGⅠNHKマイルC(芝1600m)が行なわれる。

 今回は、昨年のGⅠ朝日杯フューチュリティS(阪神・芝1600m)を勝った「2歳王者」ジャンタルマンタル、GⅠ阪神ジュベナイルフィリーズ(阪神・芝1600m)を勝った「2歳女王」アスコリピチェーノと、史上初めて「牡牝の2歳チャンピオン」が激突。今年に入ってからも、前者はGⅠ皐月賞(中山・芝2000m)3着、後者はGⅠ桜花賞(阪神・芝1600m)2着とクラシックで好走を見せているだけに、ハイレベルな争いが見られそうだ。

 そんなレースを血統的視点から占っていこう。


GⅠ初勝利を狙うディスペランツァ photo by Sankei Visual

 近年のNHKマイルCで目立つ傾向が、キングカメハメハ系の好成績だ。2022年のダノンスコーピオン(父ロードカナロア)、昨年のシャンパンカラー(父ドゥラメンテ)と、直近2年の勝ち馬がこの系統。さらに昨年の2着馬ウンブライルも、ダノンスコーピオンと同じロードカナロア産駒だ。キングカメハメハ自身は2004年に同レースを制しており、その父キングマンボの産駒は1998年にもエルコンドルパサーが勝っているなど、長きにわたって結果を残し続けている。

 今回、この系統からはディスペランツァ(牡3歳、栗東・吉岡辰弥厩舎)が出走する。

 父ルーラーシップは香港GⅠ・クイーンエリザベス2世C(2000m)の勝ち馬で、産駒はGⅠ菊花賞(京都・芝3000m)馬キセキ、豪GⅠコーフィールドC(芝2400m)を勝ったメールドグラース、朝日杯フューチュリティSのドルチェモアなど、マイルから長距離までさまざまなタイプの馬を出している。ただ、今年の重賞3勝はマスクトディーヴァのGⅡ阪神牝馬S、ディスペランツァのGⅢアーリントンC、ソウルラッシュのGⅡマイラーズCと、すべて1600m戦だ。

 ディスペランツァは、兄ファントムシーフがGⅢ共同通信杯(東京・芝1800m)の勝ち馬で皐月賞3着、祖母プロミシングリードも愛GⅠ馬という良血馬。母の父が、大種牡馬サドラーズウェルズの孫メダグリアドーロという配合だ。

 また、キングカメハメハ系で母の父サドラーズウェルズ系という配合は、2年前の勝ち馬ダノンスコーピオン(父ロードカナロア、母の父スライゴベイ)を筆頭に、タイトルホルダー、パンサラッサなど、近年に多くの活躍馬が出ている成功パターン。牝系の優秀さもあり、血統レベルは相当高い。

 ディスペランツァは昨年8月にデビューし、2戦目(阪神・芝2000m)で初勝利。その後はGⅢ京都2歳S(京都・芝2000m)6着、GⅠホープフルS(中山・芝2000m)9着と2000mの重賞で凡走が続いたが、距離短縮した5戦目の3歳1勝クラス(阪神・芝1600m)では4コーナー最後方から豪快な差し切り。前走のGⅢアーリントンC(阪神・芝1600m)でも8番手追走から上がり3F32秒4という驚異的な瞬発力を見せて差し切った。2戦2勝となったマイル戦でのGⅠ初勝利に期待したい。

 もう1頭はウォーターリヒト(牡3歳、栗東・河内洋厩舎)を推す。同馬は前走の皐月賞で16着と大敗しているが、GⅢシンザン記念(京都・芝1600m)では3着、GⅢきさらぎ賞(京都・芝1800m)でも2着と、距離短縮で巻き返せる可能性を感じさせる。シンザン記念では、道中ほぼ最後方追走から鋭い脚を見せたように、末脚の破壊力はかなりのものがある。

 同馬の父はドレフォンだが、2022年のNHKマイルCでは、ドレフォンの産駒のカワキタレブリーが単勝229.1倍の18番人気ながら3着に入り、3連単150万馬券の波乱を演出している。同馬もGⅡデイリー杯2歳S(阪神・芝1600m)3着と、マイル重賞で実績があった点に加え、血統的にも母系のサクラユタカオーやリファールが共通している。さらに、鞍上はカワキタレブリーに騎乗していた菅原明良騎手の予定で、そちらもプラス材料だ。

 以上、今年のNHKマイルCは、ルーラーシップ産駒ディスペランツァ、ドレフォン産駒ウォーターリヒトの2頭に注目する。

著者:平出貴昭●文 text by Hiraide Takaaki