ドジャース・大谷翔平が10年総額7億ドル(約1015億円)の契約を結ぶなど、大きく盛り上がった2023〜2024年のストーブリーグ。軒並みMLB選手の年俸が高騰する傾向にあり大型契約、長期契約が多く見られるようになった。

そんななか、「契約に見合った活躍ができていない」「期待していたのに大きく数字を落としている」といった、いわゆる“不良債権”選手がでてきているのも事実。この記事ではトレード等を含まずFAとなり、今季から各チームと複数年契約を結んだ高年俸選手の中から、期待値を上回れていない選手をピックアップしてご紹介する。

■調整遅れか、苦しむサイ・ヤング賞左腕

ブレイク・スネル(ジャイアンツ)

契約:2年6200万ドル(約92億5600万円) 6登板 0勝3敗/防御率9.51 WHIP 1.94

筆頭候補に挙がるのが、ジャイアンツのスネルだろう。2023年シーズンは、パドレスにて自身過去最多となる32試合に先発登板。14勝9敗、防御率2.25、奪三振234と文句のない数字を残しナ・リーグのサイ・ヤング賞を獲得。オフシーズンには、大型契約を結ぶであろう選手の1人として注目を浴び、先発補強を狙うチームの獲得筆頭候補となった。しかし、キャンプインまで契約がまとまらず、3月になってようやくジャイアンツと2年6200万ドルでの契約合意となった。

所属先が決まらなかったことでの調整遅れの影響もあったのか、今季は初登板となる4月8日(日本時間9日)のナショナルズ戦で3回3失点で負け投手となると、続くレイズ戦、ダイヤモンドバックス戦でもピリッとせず3連敗。さらに左内転筋の張りで負傷者リスト入りをしてしまう。その後、5月22日(同23日)のパイレーツ戦で復帰するも3回1/3を投げ4失点で降板、その後2試合も負けこそはつかなかったものの、4回を投げきることができず降板し未だに勝利なし。6月上旬には再び負傷者リスト入りしてしまったのだ。

スネルといえば、2016年から5年間在籍していたレイズでもサイ・ヤング賞を獲得した実績があるが、年度によって成績の乱高下が激しいことでも知られている。サイ・ヤング賞を獲得したのがいずれも契約最終年だったことが話題にあがることも少なくないが、果たして今回の契約はどうなのか? 後半戦の巻き返しに期待がかかる。

ルーカス・ジオリト(レッドソックス)

契約:2年総額3850万ドル(約57億8000万円) 登板なし

強豪ひしめくア・リーグ東地区において、現在(日本時間6月27日)まで43勝37敗と勝率5割をキープしながら3位につけるレッドソックス。ストーブリーグでは、エースのクリス・セールをブレーブスに、切り込み隊長だったアレックス・バードゥーゴをヤンキースにトレードするなど主力を放出して3年連続の地区最下位脱出を図るべく、新たな戦力を整える動きをみせた。その中で、投手陣の補強として2年総額3850万ドルの契約でむかえたのがジオリトだ。

ジオリトといえば、23年シーズン途中にエンゼルスに加入し大谷翔平の元同僚としても記憶に新しい。小さなテイクバックを用いる独特なフォームで、19年にはオールスター選出、20年にはノーヒッター達成などリーグ屈指の好投手として知られていた。23年ホワイトソックスでは21試合に先発し6勝6敗、防御率3.79、奪三振131とローテーション投手としては合格点の成績をあげていたものの、エンゼルスへのトレード後は1勝5敗、防御率6.89、奪三振34と期待を裏切る結果になってしまった。プレーオフ出場が絶望となり、ウェーバーによりガーディアンズに放出されると、そこでも6先発で1勝4敗と復調できず、オフにFAとなった。

契約最終年で大きく株を落としてしまったものの、先発ローテーションの中心としてレッドソックスにむかえられたジオリトだが3月に、右肘側副靱帯の部分断裂が発覚。手術を受けたことで今シーズンは全休となることが決まっている。契約期間が2年であることから、リハビリ期間を考慮すれば今後ほとんど登板機会がないことも考えられるジオリト。レッドソックスとしては大誤算という他ない。

■ロドリゲスは大型契約も登板なし

エドゥアルド・ロドリゲス(ダイヤモンドバックス)

契約:4年総額8000万ドル(約128億円) 登板なし

2023年、ナ・リーグ西地区2位となりワイルドカードからワールドシリーズまで登りつめたダイヤモンドバックス。補強ポイントとして挙げられていた先発左腕として白羽の矢が立ったのが、ロドリゲスだった。昨年までタイガースに所属していたロドリゲスは、23年シーズン26試合に先発し13勝9敗、防御率3.30、奪三振143とア・リーグ中地区2位ながら勝率5割以下と低迷するチームの中で孤軍奮闘。FA前年に2021年以来となる規定投球回数を投げきったことから、市場の評価が高まりダイヤモンドバックスと4年総額8000万ドルでの契約を勝ち取った。

ワールドシリーズに出場したものの、投手成績はナ・リーグで下位の成績だったダイヤモンドバックスの投手陣。今季は、エースのザック・ガレン、共に新加入となったジョーダン・モンゴメリーらとのローテーションで大車輪の活躍を期待されていたロドリゲスだが、開幕前に広背筋の張りにより故障者リスト入りすると、6月現在まで復帰できずにシーズンの折返しをむかえてしまった。4年総額8000万ドルと決して安くはなく、比較的長い契約ということを考えるとチームにとっては大誤算といえるだろう。現在(日本時間6月27日)まで39勝41敗でナ・リーグ西地区3位と勝率5割を超えられていないDバックス。チーム浮上の起爆剤として、ロドリゲスのローテーション復帰は必須だ。

イ・ジョンフ(ジャイアンツ)

契約:6年総額1億1300万ドル(約176億円) 37試合 打率.262、2本塁打、8打点、2盗塁 OPS.641

期待値が大きかっただけに残念な途中離脱となってしまったのがジャイアンツのイ・ジョンフだ。日本でも活躍した元中日ドラゴンズのリー・ジョンボム氏を父に持ち、KBO(韓国プロ野球)でもMVPを獲得するなど将来有望な25歳の外野手。23年オフにポスティングシステムを利用し、MLBに挑戦するとジャイアンツと6年総額1億1300万ドルで契約した。

前評判通り、春のオープン戦では打率.343、1本塁打、5打点という好成績を残すと開幕戦となるサンディエゴ・パドレスに1番センターで出場。ダルビッシュ有からMLB初安打を記録するなど好デビュー。韓国屈指のヒットメーカーの片鱗をみせていた。

しかし、5月12日(日本時間13日)のレッズ戦にて外野への大飛球を処理した際にフェンスに激しく激突。そのまま立ち上がれなくなると、負傷交代。検査の結果左肩靭帯の損傷が発覚し手術を行うこととなり、今季中の復活は絶望となってしまった。

離脱前まで打率.262、本塁打2、OPS.648と主にリードオフマンとしてチームを牽引してきた。怪我を恐れないハッスルプレーが原因となっての離脱がゆえに、ファンからも同情の声が多く聞こえてくるが期待値が高かっただけに、残念なデビューイヤーとなってしまったため紹介させてもらった。

大型契約を結んだチームにとって、FA新加入の選手の不調や戦線離脱はチーム運営を難しくしてしまう。彼らが活躍していれば現在のチーム状況が大きく変わっていた未来があったかもしれない。シーズン折返しを迎えたMLB。前半戦で大きく出遅れてしまった。新規加入選手たちの巻き返しに期待したい。