また円安がじりじり進んでいます。円相場はきょう、155円台をつけるなど再び歴史的な水準に。「超円安」で日本経済は復活できるのか。大きな分岐点に立っています。

記録づくめの決算を発表したのは、輸出企業の代表格「トヨタ自動車」です。

トヨタ自動車 佐藤恒治社長
「これほど車を作って、お客様にお届けしてということが、こんなにありがたいことだと」

売上高45兆円。営業利益5兆円。ともに日本企業の歴代最高です。

ハイブリッド車の販売が好調だったことに加え、押し上げたのが「超円安」。というのも、トヨタが定めていた想定レートは1ドル=145円。これを上回る歴史的な円安で過去最高業績につながりました。

しかし、1ドル=75円台をつけ、戦後最も円高が進んだ13年前、真逆の事態が起きていました。

トヨタ自動車 伊地知専務(当時)
「(1ドル=)76円レベルは輸出事業にとって本当にしんどい。限界を超えている」

日本自動車工業会 志賀会長(当時)
「1年を通じて悩まされたのは、歴史的な超円高でありました」

「円高」は輸出企業の価格競争力を奪い、業績は軒並み悪化。賃金も物価も上がらないデフレが長期化し、日本経済低迷の“元凶”とされていたのです。

ただ、消費者には…

「おいしいものを安く買って食べられるのはいい」
「(円高の)いい面は利用したい」

スーパーで行われていたのは「円高還元セール」。賃上げはなかったものの、輸入食材は安く買えた時代。円安による値上げラッシュが当たり前の今とは対照的です。

その後、政府はアベノミクスを掲げ、「円高」の解消でデフレ脱却を目指してきました。輸出企業の収益改善で、中小企業や低所得者に恩恵が…。「トリクルダウン」という言葉が飛び交ったのも、このころです。

そして、きょう、当時から円の価値が半分以下に。円安は輸出企業の追い風となる一方、中小企業や生活者にとっては物価高という形で、生活を苦しめる新たな“元凶”となっています。

トヨタ自動車 佐藤恒治社長
「仕入れ先様分の労務費に相当する分を価格に反映しながら購買政策といいますか、調達をさせていただいている」

円安を背景に、稼いだ利益を輸出企業が下請け企業や従業員に十分に再配分できるか。「悪い円安」で終わらせない取り組みが今、求められています。