その連敗は15まで伸びた。

 パ・リーグ最下位に沈む西武が、4月27日から29日のソフトバンク3連戦で、何と3試合連続でサヨナラ負けを喫するという珍事が起きた。特に27〜28日は延長戦で惜敗。延長15連敗は2リーグ制ワースト記録だそうだ。

 なぜ、西武は延長で勝てないのだろうか。

 これは現在のチーム事情と大きく関係している。

 緊喫の課題は攻撃力にある。

 今季の西武の戦いぶりを整理していくと、実に僅差のゲームが多い。勝っていても負けていも接戦続き。これまでの8勝のうち、セーブシチュエーションにならない4点差以上をつけて勝利したのは2勝しかない。同じように負け試合でも、4失点以上の大敗は16敗のうち3試合しかない。これは上位3チームとほとんど変わらない。
  つまり、投手陣は善戦している。12球団屈指とも言われる先発陣の防御率はリーグトップだ。しかし、リリーフの防御率はリーグ最低。この事実だけを伝えると「救援陣の質が低い」と思えてくるが、実はそう簡単な問題ではない。

 西武の救援陣はアブレイユをクローザーに置き、セットアッパーは右肘の違和感で24日に離脱するまで甲斐野央が務めていた。この二人を中心にして、防御率1点台のサウスポー佐藤隼輔、開幕から状態のいい本田圭佑、21年の新人王・水上由伸。現役ドラフトで加入の中村祐太、増田達至、平井克典のベテラン勢。開幕当初は育成上がりの豆田泰志、ルーキーの糸川亮太がブルペンの陣容を組んでいた。

 分厚いメンバーに見えたが、開幕してからのポジションは使いながら見定めていくという方針が裏目に出た。これ自体は西武に限らず、どのチームも同じ方針だが、西武の場合は勝ち試合も負け試合も僅差。つまり、多くの試合が勝ち継投に近いシチュエーションでの登板を強いられるのだ。

 例えば、豆田やルーキーの糸川、中村らはストレスのかからないところで登板して、少しずつ経験を重ねていく。そこで好投して信頼を得ていく。通常、リリーバーの序列はそうやって決まっていく。

 しかし、開幕から接戦が続いたために、そうした経験をさせる機会が十分に得られなかった。その証拠に、開幕シリーズでは3戦目にプロ初登板となった糸川がサヨナラ負けを献上している。
  延長戦での継投のやりくりというのは難しい。主催試合であれば、9回で同点の場合はクローザーから順番に登板していく。つまり、リリーフでの序列が高い順に登板していくことになる。すると11〜12回は、経験値の少ない投手が受け持つ形になる。

 一方、敵地だと一番良い投手を残し、勝ち越した時点でクローザーを登板させる。それ以外のイニングは相手打線の巡りを見ながら選択していくことになる。

 糸川に続いてサヨナラ負けを喫したのは、開幕3カード目の日ハム戦。打たれたのは豆田で、3登板目だった。ベテランの増田は2敗しているが、最初の敗戦時は登板機会が1週間も空いている。昨日28日に負け投手になった中村も、1週間ぶりの登板だった。

 先発投手陣が踏ん張りながらも勝ちきれない。さらに点差をつけられない戦いぶりが、しわよせとなって救援陣にやってくる。その結果が不名誉な記録につながっているといえよう。

 28日の試合では先行される苦しい展開だったが、8回表に同点に追いついてからはどちらかというと西武の方がチャンスは多かった。しかし、アギラーや佐藤龍世で作ったチャンスが下位打線に回るなど打順の巡りが悪く、あと一本が出なかった。
  最終的には3番手捕手・古市尊の捕逸で負けたが、12回裏の決着はミス云々よりも、それまでに仕留められなかったことの顛末と言えるだろう。

 松井稼頭央監督は終始「こちらの責任。使っている側が悪い」と試合後の会見で述べるなど、敗戦の責任を選手に押し付けたりはしていない。打線の停滞が投手陣の負担につながっていることを十分に理解しているはずだろう。

 外崎修汰や源田壮亮など、調子が上がってこない選手がいるのも事実だ。だからこそ、攻め方や打順はキーを握ってくる。少ない得点での勝利ばかり目指していてはなかなかチーム状態は安定しない。“山賊打線”は組めなくとも、一気に畳み掛ける展開を作り、ストロングポイントの投手陣を活かすことでしか状況は好転しない。いかに攻め切るかだろう。

取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)

【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園は通過点です』(新潮社)、『baseballアスリートたちの限界突破』(青志社)がある。ライターの傍ら、音声アプリ「Voicy」のパーソナリティーを務め、YouTubeチャンネルも開設している。

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