世界的に評価されるダンサー・舞踊家にして俳優としても唯一無二の存在感を放つ田中泯が主演し、海外でも精力的に活動する新田真剣佑らと共演するドラマ「フクロウと呼ばれた男」の第6話と第7話が5月1日に配信された。政界のフィクサー・大神龍太郎(田中)が取り組まなければならない議員のスキャンダルと家族の問題。その展開にヒヤヒヤとする中、龍太郎の次男・龍(新田)の動きから目が離せなくなっている。(以下、ネタバレを含みます)

■国家の裏側・タブーに切り込んだ社会派ドラマ

本作は、あらゆるスキャンダルやセンセーショナルな事件を、時にもみ消し、時に明るみにさらして解決してきた黒幕/フィクサーである“フクロウ”こと大神龍太郎を主人公に、国家の裏側・タブーに切り込んだ社会派政治ドラマ。龍太郎を田中、父・龍太郎と対極な生き方で“正義”を掲げる次男・龍を新田が演じる。

2人を取り巻く家族や政治家キャストとして、龍太郎の妻・杏子役に萬田久子、長男・一郎役を安藤政信、長女・影山弓子役を長谷川京子、次女・理沙子役を中田青渚、自由新進党幹事長・竹内創役を中村雅俊、内閣総理大臣・渡辺しおり役を原田美佐子、財務大臣・西條宗助役を大友康平、厚生労働大臣政務官・丸山ひろし役を益岡徹が務め、ガッチリと脇を固めている。

■自身が務めるNPO団体の疑惑を知る龍

早くも後半戦突入となった第6話、第7話。丸山の弟のスキャンダルと自由新進党の派閥対立が絡み合う様子を見せる一方、龍太郎の長男・一郎がまさかの出来事を引き起こしてしまうなど家族の危機的展開に、手に汗握るというより、ひたひたと何かが忍び寄るような緊張感が漂い、画面に引き付けられる。

そんな中、龍も動き出した。付き合い始めたジャーナリストのサラ(ハイディ・バーガー)と共に、自身が勤めるNPO団体に抗議に来た農夫のもとを訪ね、「力になりたい」と申し出た。

農夫が語ったのは、国が進めようとしている法案により、何もかも奪われてしまうかもしれないという不安。先祖代々の土地の立ち退きを要求されていたのだ。

龍は「土地を売る必要はないと思います。それは法律で守られています」と言うが、「そんなもん当てになるかい」と農夫。近くに化学工場が建設され、その汚染水を垂れ流せば農業が立ち行かなくなることを狙っているらしい。そして、それを計画しているのが、龍が働くNPO団体だというのだ。

■龍を守ってくれる存在とは…

「人の役に立ちたい」。そう願って働き始めた龍が絶句する一瞬を新田が視線の動きで見せた。

農夫の家を出て、一緒に調べるというサラだったが、龍は「君は関わらないほうがいい」と断った。「日本は世界で最も安全な場所の一つだ。他人事に首を突っ込まない限り。でも一旦何かに関われば、最も危険な場所になり得る。一度自分に逆風が吹くと誰も助けてくれないから」というのだ。ただ、自分には「守ってくれる人がいる」とも。

その“守ってくれる人”について、第7話で再びサラが問い掛け、龍は父親だと明かした。そこで龍太郎が、いわゆる“黒幕”という存在であるからと話すも、実際にどんなことをしているのかまでは龍は知らないという。


■新田の丁寧な演技に引き込まれる

国の法案という問題に、龍太郎と龍、それぞれの立場から迫っていくことが、はっきりと描き出された。

「何が起こっているのか知りたいだけ」。龍の思いを、静かなせりふ回しにのせた新田。新田の近々の出演作といえば、ハリウッド映画の主演作「聖闘士星矢 The Beginning」やNetflixの「ONE PIECE」とコミック原作が続き、本作と同じディズニープラスで2023年に配信スタートした「ワンダーハッチ -空飛ぶ竜の島-」は実写とアニメが融合したファンタジー作品で、いずれもアクションを絡ませた演技を披露した。

そんな中、本作で新田が見せる“等身大の青年”という役柄は少々久しぶりな感覚もあるが、丁寧に作り込んでいるのが伝わる。父親と真逆だけれど、ある意味同じともいえるのか、“正義”をふつふつと沸き立たせるような、瞳の演技が心に残り、クライマックスに期待が高まる。

当メディアのインタビューで「日本語と英語の両方のせりふがある役というのは珍しいですし、この作品でしか見られない演技が見られると思いますので、それも楽しんでいただきたいです」と語っている通り、今作ではアクションだけではない、国際派俳優として世界に羽ばたいている新田の魅力が発揮されている。

「フクロウと呼ばれた男」は、ディズニープラスのスターで独占配信中。5月8日(水)に第8話〜最終回の第10話まで一挙配信される。

◆文=ザテレビジョンドラマ部