客から理不尽な暴言などの迷惑行為を受ける「カスタマーハラスメント」、いわゆる『カスハラ』が、タクシーの現場でも相次いでいます。運転手たちは、毎日のようにカスハラに悩まされているといい、会社側も対策をすすめています。  東海地方を走るタクシーの車載カメラ映像に残されていたのは、横暴な態度で運転手を「お前」呼ばわりする乗客の男性の姿です。

乗客の男性: 「喋んな!老害が。学もねえ、知識もねえ、車転がすしか知識ねんだろ。その車転がす知識もねえんだ。お前は、俺を安全に的確に送り届ける義務があるんだろ?遠回りしたと思ったら俺は即刻、訴えるからな」  男性運転手は、指示通りに目的地への道を確認しながら進みます。しかし、男性は「料金が高すぎる」とクレームを入れます。客からの理不尽な暴言などの迷惑行為を受ける『カスタマーハラスメント』です。

乗客: 「遠回りやん」 運転手: 「遠回りではないと思いますけど」 乗客: 「俺が言っているのは、金額が高えって言ってんの。それを言ったらちゃんと走るわけじゃん。散々トロトロ走りよってさ」 運転手: 「スピードは関係ありません。金額には関係ありません」 乗客: 「電話せぇ。お前どこの会社?もめるわ」  被害を受けたのは、名古屋に本社を置き、グループで1300台を保有する「つばめタクシー」です。

つばめ自動車 天野清美社長: 「ドライバーが辛抱して済ましてしまうのも入れれば、一営業日で1、2回は(カスハラ被害が)あるんじゃないかと」  運転手たちは、毎日のようにカスハラに悩まされているといいます。客の立場を盾にした目に余る言動が相次いでいます。  他にも、女性運転手と客の男性が、目的地を巡ってトラブルになったこともありました。

乗客: 「(建物名)に行けって言っただろ。何やっとるんだバカヤロー。何やっとるんだ」  納得がいかない男性は、持っていた財布を強く叩きつけます。

乗客: 「なんだお前、謝りもせずに、たわけ」 運転手: 「いや謝りましたよ」 乗客: 「バカヤローこら」 運転手: 「謝りました、謝りました」 乗客: 「謝っとらへんわお前!バカヤロー、言い訳するな、たわけ。ええ加減にしておけ、バカヤロー。横着いわ、ふてぶてしいわ。なんだその目つきは。なんか文句あるのか、おい。あったら言ってみろ」  男性は興奮し、身を乗り出して暴言を吐きました。知人が必死になだめる姿もありますが、収まりません。

運転手: 「申し訳ありませんでした」 乗客: 「申し訳なかったらそんな態度じゃねぇわ。もう(仕事)やめたらええが、はよ」  男性は料金を支払い、タクシーを降りました。  あまりのショックだったのか、女性運転手は、ハンカチで何度も涙をぬぐっていました。

天野社長: 「入社して3カ月以内の退職がだいたい5%〜10%いる。そのうちの3分の2は、カスハラが原因です。ひどいものについては警察に届け出る、裁判を起こすというようなことは指示を出しています」  ドライバー不足が叫ばれる今、社員を守るため、会社側もカスハラ被害を見逃すわけにはいきません。  つばめタクシーでは、車内マナーを呼びかける案内を提示しています。状況によっては継続乗車を断ることや、客への乗車拒否、慰謝料の請求をする可能性もあるとしています。

天野社長: 「お客様は神様ではありませんので。一般的な社会常識・マナーが私どものタクシーだけでなく、全てのビジネスで徹底されるといいのかなと思っています」