国の重要無形民俗文化財・お山参詣の保存継承活動を行っている団体が29日、青森県弘前市の弘前公園で、登山囃子(ばやし)を奏でるパレードを行った。津軽一円から集まった囃子方約120人が、見ごろを迎えた八重桜の花々の下、厳かな音色を響かせた。

 実施したのは、お山参詣保存会(本部・岩木山神社=弘前市)の部会である県登山囃子保存会(小野文男部会長)。お山参詣の囃子の腕を競う大会に合わせて毎年、園内演奏を行っている。今年は、コロナ5類移行後のさくらまつりを盛り上げるため、北門から本丸を経て園内の護国神社に至るルートに延長した。

 午前9時過ぎ、白の衣装に身を包んだ隊列は北門を出発。力強い太鼓、叙情豊かな笛や鉦(かね)の音を奏で、ゆっくりと歩いた。本丸では青空に浮かぶ岩木山に向かって整列し、「平和が続きますように」との願いを込めて演奏をささげた。

 園内ではカンザンやヤエベニシダレなど、ソメイヨシノに続いて咲く八重桜「弘前七桜」が咲き誇っている。観光客らは伝統文化の隊列と、白やピンクの花々を一緒に写真に収めるなどしていた。

 青森市から演奏に参加した会社員鹿内秀樹さん(42)は「岩木山に向かって演奏できたのは感慨深い。これからも(岩木山神社に登拝する)地域の風習を若い人に伝えたい」と述べた。北海道千歳市から観光で訪れた外川裕太さん(35)は「出身が岩手県なので、五穀豊穣(ほうじょう)と家内安全を願う東北の文化は身近に感じる」と話した。