馬なりながら鋭い末脚を繰り出したアスコリピチェーノ(右)
馬なりながら鋭い末脚を繰り出したアスコリピチェーノ(右)

NHKマイルカップ2024

[GⅠNHKマイルカップ=2024年5月5日(日曜)3歳、東京競馬場・芝1600メートル]

<美浦>無敗の2歳女王に輝いた阪神JF同様、栗東滞在調整で挑んだ牝馬クラシック1冠目・桜花賞は2着惜敗。悔しさを晴らすべく、中3週というキャリア最短間隔での参戦を決意したアスコリピチェーノ陣営だが、気になるのはその状態面だ。前走と平行線でも勝負になるのは間違いないが、今回は必勝を期す路線変更。前走以上を否が応でも期待してしまう。

 これまでは一戦ごとの消耗度の大きさを配慮に入れ、間隔を空けながらレースを使ってきた。しかし、この中間はわずか1週間ほどの短期放牧で4月19日に帰厩。翌20日から乗り込みを開始し、21日に初時計をマークするなど、以前とは全く別馬のような調整過程を踏んでいる。

「前走後のダメージが少なく、回復も早かった。金曜日(19日)に帰厩できたのも状態がいいからです」。レース10日前の25日、黒岩調教師がそう語ったように、中間もすこぶる順調。それは、6ハロン79・4ー11・1秒の好時計を叩き出した1週前追い切りを見れば誰もが納得するだろう。黒岩師は「気持ちも高ぶることなく、操縦性もいい。直線で抜け出してからも気を抜かずにいい走りでしたし、改めていい状態です」とデキの良さをアピールした。

 先週でかなりのデキであることは確認できた。南ウッドコースで行われた注目の最終追い切りは、助手を背に僚馬のシアブリス(3歳未勝利)と併せ馬を消化。1馬身ほどの追走から終始馬なりのまま、余裕の手応えで併入フィニッシュを果たした。それでもラスト1ハロンは11・1秒(6ハロン82・2秒)が出ていたのだから状態の良さがうかがえる。大きなアクションがなかったのは抜群の動きだった先週の追い切りから、微調整で大丈夫だという自信の表れに違いない。

 黒岩師が「東京コースは力を発揮しやすいコース」と語るように、この馬の力を出し切ればおのずと結果はついてくるはず。「フットワークが大きいですし、左回りの動きも良かったので東京コースは楽しみです」。力を出し切って悔しい結果に終わった前走があるからこそ、力を出し切って最高の結果を残したい。その気持ちが中間の調整過程からも伝わってくる。満を持してのマイル参戦に、余念のない仕上げを施し、桜花賞での雪辱を果たすお膳立ては整った。

著者:東スポ競馬編集部