三浦半島の4市1町(横須賀市・鎌倉市・逗子市・三浦市・葉山町)と日本テレビは、二酸化炭素の吸収源となる藻場の再生(ブルーカーボン)や漁業振興に直結する磯焼け対策を連携・協働していく。5月17日に横須賀美術館で開かれた共同会見で会議体の設置を発表した。各自治体が進めている対策を共有しながら、新たに取り組む枠組みなども検討する。日テレは情報発信で協力するほか、「企業版ふるさと納税」による寄付(2400万円)を通じて活動を後押ししていく。

相模湾側沿岸では、海藻を食べる魚やウニの増加に加え、海水温の上昇で海の生物の産卵・繁殖の場である藻場が消失する磯焼けが進行している。データがあるのは横須賀市のみとなるが、2012年頃から佐島漁港と長井漁港の間に位置する小田和湾で顕著となり、直近の調査ではカジメは98・5%、アマモは95%減少しているなど壊滅的な状況という。

磯焼けの対策は、温暖化を抑制する脱炭素の取り組みにもつながる。炭素を吸収する海藻などのブルーカーボン生態系の保全が注目されており、4市1町が連携し、手法や知見を共有しながら回復をめざす。横須賀市の上地克明市長は「すぐに成果は出ないが、使命として豊かな海を次世代に引き継ぐ」と意気込みを話した。学術監修として参加している元日テレアナウンサーで海洋科学研究者の桝太一さんは「海に自治体の境界線はない。逗子の変化が葉山の変化につながる」と連携の意義を強調した。

横須賀市は、相模湾(長井)でカジメ場を造成するとともに海洋環境問題の啓発を目的としたアマモの植え付け体験や観察会を開いていく。

横須賀市北部の造成浅場自然発生コアマモ確認

有志グループ「よこすか海の市民会議・よこすか海遊クラブ」は5月中旬、浦郷町のリサイクル施設「アイクル」脇にある造成浅場で移植したアマモやコアマモが群生しているのを確認した。

横須賀市が2019年から管理している敷地面積約5千平方メートルの三角地帯。市の許可を得て同グループが「海に森をつくろうよ!PROJECT」と題した活動を行っている。空中ドローンなどを用いた今回のモニタリング調査で、コアマモが直径5mのサークル状に自然発生していた。アマモ場をアオイリカが泳いでいる姿もあったという。川口将人代表は、「現状では食害にあった様子は見当たらない。粘り強く様子を見守っていくとともに、環境学習の場としても活用していきたい」と話している。