亀はうさぎのことは見ていません。見ていたのは「ゴール」だけ。自分軸をもって、ゴールするぞと歩いていたのです。競走の途中では急な山道を上ったり下りたり、道が曲がったり、まさに紆余曲折があったでしょう。

でも亀はゆっくりでも「ああ、自分には長い爪があってよかったな。この爪があれば転ばなくて済むな」とか、「疲れたけど、4本の足を使って踏ん張ろう」と思いながら、ゆっくり、でも着実にゴールに近づいていたはずです。亀は、「もうダメだ」「ゴールなんてできるわけない」などと思わなかったですよね。

このときの亀の頭のなかで起こっていることこそが、わたしがよくお伝えしている「肯定感情」であり「肯定脳」です。これがあれば、1歩1歩、ゴールに向かっていくことができるのです。

小学校の高学年に入っていく10歳ごろは、自己肯定感が下がりやすい時期ともいえます。どうしても友だちと比べて「○○ちゃんはできるのに、わたしはできない」「○○くんももっているから、ぼくもほしい」などといったように、人との比較によって判断したり、浮き沈みをしたりしやすくなります。

学校に行けば同級生がいる。人と比べるなといってもなかなか難しいでしょう。だからこそ、せめてお母さん、お父さんは、だれかと比較するのではなく、子どもの強みや、子どもの目指す目標や目的に向かって歩けるように意識して声かけをしてあげましょう。

「うさぎと亀」の亀のように、自分でゴールを設定できるように導いてほしいのです。その子の特性を伸ばすために、まずはここが第1歩です。

第1回、第2回で紹介したような言葉かけをどんどんして、子どもに肯定感情や肯定脳ができていけば、子どもは自分の目標に向かって着実に歩いていきます。

子どもを観察して0.1ミリの成長に気づく

声かけのポイントはもう1つあります。

それは、0.1ミリでもいいから、成長したところを探すこと。結果ではなく、プロセスをほめることです。ほんの少しの成長を伝えるためには、子どもをちゃんと観察して気づいてあげる必要があります。

成長やプロセスをほめるときにやってしまいがちなのが、ほかのだれかと比較してしまうことです。