今回の紅麹による健康被害は中国のSNSでもトレンド入りし、台湾で健康被害が報告されたことで引き続き注目されているが、「我がこと」感は薄い。

コロナ禍で日本に来て小林製薬の商品を買い求める人が減っている一方で、小林製薬の得意とする(処方箋を必要としない)OTC医薬品は薬事規制のため、主力製品の多くを中国で展開できていない。

2013年3月期まで100億円に満たなかった小林製薬の海外売上高は2023年12月期で400億円を超え、同社は2025年に533億円以上に増やす目標を掲げる。中国の売上高は2022年の102億円から2025年に171億円以上に引き上げることを目指している。

売り上げは拡大基調を続けているものの、「神薬」ともてはやされた頃に比べればブームは落ち着き、ヘルスケアブランドというイメージも薄まっている。

買い控えが下火になる中で、勃発した問題

ただ、中国本土では現時点で健康被害の訴えは報告されていないが、いつ出てきてもおかしくないのも確かだ。

爆買いブームで中国のインバウンド需要を取り込み成長したブランドは、中国の風評に経営が左右されやすい。資生堂は東京電力の処理水放出の影響で中国市場の販売が急減し、2023年12月期の業績に響いた。

処理水放出による日本ブランドの買い控えが徐々に下火となる中で投下された小林製薬の不祥事は、同社はもちろんのこと、中国や台湾でヘルスケア製品を展開するほかの日本企業にとっても新たな逆風になりかねない。

著者:浦上 早苗