しかし、4月1日の在シリア・イラン大使館への攻撃はイランが「国際法違反だ」と強く反発するように、イランはイスラエルがこれまでのルールを逸脱してきたと捉えた。

シリア領内でのイスラエルによるイラン関連の標的を狙った攻撃はこれまでも繰り返されてきたが、イランは無視するか、親イラン勢力による小規模な報復を実施するのにとどめてきた。

だが、在シリア・イラン大使館への攻撃は、大使館にいた革命防衛隊司令官が殺害されるなどイラン側の衝撃は大きく、イランは国内世論的にも看過できず、イスラエルを助長させないためにも報復の必要性に迫られた

アメリカとイスラエル関係悪化に便乗

イスラエルがルールを破ったと認識したイランは、倍返し的にイスラエルに大規模な攻撃を仕掛けたが、あくまでもイラン大使館空爆への報復であり、民間人に犠牲を出さないなど慎重に計算されたものだった。報復以上の意図はなく事態をエスカレートさせるつもりもないとのメッセージを送っていた。

その上でイスラエルが報復攻撃を行えば、大規模に反撃するとして事態の収拾を図っていた。イランには、イスラエルがガザ戦争でハマス掃討作戦に手こずり、強固な同盟関係にあるアメリカとイスラエルの間がぎくしゃくしてバイデン政権のイスラエルに対する不信感が強まっているとの読みもあった。

実際、バイデン大統領はイスラエルのイラン攻撃に反対する姿勢を示し、イスラエルが攻撃したとしてもアメリカは攻撃に加わらないとの方針を明確にした。