これが、アメリカの経済学者、ロバード・ゴードンの設定した、最も重要な経済成長における謎(“The Rise and Fall of American Growth”, 2016)である。これは、ローレンス・サマーズ元財務長官らとの世界金融危機(リーマンショック)後の長期停滞論の論争としてもクローズアップされた。

第2次産業革命が決定的に重要な役割を果たした

サマーズ氏らは長期的に需要が不足していると主張し、大恐慌後の財政出動のような公共事業を主張した。一方、ゴードン氏は供給側の要因を挙げ、生産性の上昇率が低下している、第2次産業革命のインパクトに比してIT革命は広がりが小さく、供給側の要因で成長力自体が落ちており、19世紀後半から20世紀前半の奇跡の世紀は一度限りのものだと主張している。

ゴードン氏によれば、第2次産業革命の影響の広がりは、経済における生産性上昇・生活の改善において、歴史上、唯一無二のものだとし、これが奇跡の成長をもたらしたとしている。

私の考えは、第2次産業革命が決定的に重要だという点では一致しているが、その理由は異なる。

第2次産業革命により、家庭に電気が届いた。家電が生まれた。そして、「三種の神器」と言われる洗濯機、掃除機、冷蔵庫が登場し、水道、電気、ガスが家庭にネットワークとして届き、家事労働は一変した。

それまでは、家事労働ですべての時間を使っていた主婦が、それらから解放され、自由になったのである。そして、彼女たちは外に出て、賃金労働を行うことができたのである。

これは彼女たちにとって幸せであったかどうかは議論があるが、経済にとっては市場における労働力が倍増したのである。ここに生産力が高まり、経済は大きく成長・拡大したのである。この労働力の増加というのは、ゴードンが言っていることである。