これに対し、自民党内では菅義偉前首相を中心とする“反岸田勢力”が、「次期衆院選を岸田首相で戦うことはあり得ない」と主張する構え。これが党内で常識化すれば、岸田首相が執念を燃やす会期末解散も困難となり、当面、政権は維持できても、9月の総裁選での不出馬・退陣に追い込まれる事態も想定される状況だ。

焦点の島根1区は「自民VS野党」に

今回の3補選で自民を苦境に追い込んでいるのは、岸田政権の「不透明で不誠実な巨額裏金事件への対応」(政治ジャーナリスト)についての国民の怒りの大きさだ。特に、自民の細田博之前衆院議長の死去による島根1区の選挙戦がそれを裏付けている。

同区は、自民が新人で元財務官僚の錦織功政氏(55)を、立憲は同区で故細田氏と長年戦ってきた元議員の亀井亜紀子氏(58)を、それぞれ公認候補として擁立。共産など他党・政治団体が候補を取り下げたことで亀井氏が事実上の野党統一候補となり、「自民VS野党」の形となった。

同区はもともと、竹下登元首相、青木幹雄元官房長官(いずれも故人)が県民の圧倒的な支持を集め、現在もすべての選出国会議員が自民という、全国でも有数の保守王国だ。にもかかわらず、今回の補選で苦戦しているのは、同区でも裏金事件への有権者の強い反発があるからだ。

そもそも、裏金事件の発覚とほぼ同時となる昨年11月10日に急逝した細田氏は、裏金を組織的に作っていた清和政策研究会(安倍派=解散=)で2014年から2021年まで会長を務め、裏金づくりで采配を振るえる立場だった。