地方創生が叫ばれて10年。実現できたという自治体はそう多くない。では、政府が流し込んだ膨大な「地方創生マネー」はどこへ溶けていったのか。『週刊東洋経済』5月11日号の第1特集は「喰われる自治体」だ。

「アマゾン、ふるさと納税に来春にも参入へ」──。

3月11日、朝日新聞がそう報じると、かいわいに激震が走った。アマゾンといえば、米国に本拠を置くECプラットフォームの巨人だ。アマゾンがふるさと納税の仲介サイト業に参入するとなれば、業界の勢力図が大きく変化することは間違いない。

ふるさと納税による寄付額は年々増加を続け、2022年度には9654億円に上った。23年度は1兆円を超えたことが確実視されている。1兆円市場になったことで、うまみがあるとみた「黒船」が襲来した。

現在、仲介サイト業では国内大手4社がシェアを争っている。

「ふるさとチョイス」「楽天ふるさと納税」「さとふる」「ふるなび」の4サイトだ。「ふるさとチョイス」を運営するトラストバンクの親会社であるチェンジホールディングス、「ふるなび」を手がけるアイモバイルの株価は、アマゾン参入が伝わった3月11日、それぞれ16.4%、11.0%下落した。

自治体向けの営業をスタート

アマゾン側は参入を公式に表明しておらず、東洋経済の取材に対して「お答えできることはありません」としたが、参入に向けて自治体へのプラン提案など営業を始めている。ある自治体のふるさと納税担当者によると、アマゾンは自治体に対して2つのプランを提案している。

1つは既存業者と同様に、寄付額の10%程度を仲介手数料として自治体が支払う通常プラン。もう1つが、初期手数料250万円を支払うことで、仲介手数料を寄付額の3.8%に抑えられるプランだ。