東北・北海道などの雪国では、雪に閉ざされた冬期の運動不足も問題となる。特に高齢者にとっては、屋外での運動が困難になりがちで、若い世代も移動手段に車利用者が多く、日常的な運動量が減少気味だ。

国立がん研究センターがん対策研究所の松田智大さんは、積雪による通院の困難さや、公的な交通機関の不便さによる病院へのアクセス格差なども指摘する。その結果として、「診断や治療が遅れ、死亡率の上昇に影響している可能性も高いのでは」と推測する。

がんの多くがそうであるように、大腸がんも初期段階では自覚症状がない。そのため、40歳以上の男女を対象に、便潜血検査による大腸がん検診を受けることが推奨されている。家族歴や既往歴などで高リスクの場合はより早い年齢での検査が望ましい。

早期がんなら5年生存率は90%以上

治療には手術、薬物療法などがあるが、早期発見が大事で、ステージⅠの早期の大腸がんであれば、5年生存率は90%以上と高くなっている。

全国ワーストの青森県だが、青森県がん・生活習慣病対策課に今後の対策を聞くと、「2024年度から新たに、市町村が行うがん検診の精密検査費の助成を開始する」と言う。初回受診費用の自己負担実質無料で精検受診率を上げ、死亡率改善につなげるのがねらいだ。

「がん多発県だからといって、じゃあ、そこから転居すればがんにならないか、というとそういうわけではありません。かかりやすい地域性から、その理由を知って、生活に生かしていくことが大切です」と松田さん。正しい情報こそが、自らの健康を守り、がんリスクを低下させるカギとなりそうだ。

国立がん研究センターがん対策研究所国際政策研究部長
松田智大さん

1996年、神戸大学法学部(医事法専攻)卒業後、東京大学大学院医学系研究科修士課程修了、同博士課程単位取得退学、トゥールーズ第3大学医学部博士課程修了。2006年より国立がん研究センターがん対策情報センターがん情報・統計部研究員、2011年より同センターがん統計研究部室長、同センターがん登録センター全国がん登録室室長などを経て、2021年より現職。専門は疫学、公衆衛生学。著書に『がんで死ぬ県、死なない県 なぜ格差が生まれるのか』(NHK出版新書)。

著者:石川 美香子