世界36カ国を約5年間放浪した体験記『花嫁を探しに、世界一周の旅に出た』が話題を呼んでいるTVディレクター・後藤隆一郎氏。

その後藤氏が旅の途中で訪れた、ヒマラヤ山脈にある辺境の地、チベット仏教の聖地「スピティバレー」で出会った「標高4000mに暮らす人々」の実態をお届けします。

*この記事の前半:TVマンが見た「絶滅危惧種と暮すチベット民族」驚く日常(前編)

*この記事の続き:TVマンが見た「絶滅危惧種と暮すチベット民族」驚く日常(中編)

ロバ、馬、そして「ゾ」

村の中心を離れピン川に近づくと、あふれんばかりの干し草を積んだロバを見かけた。

ロバを引く中年の男性の横で、もう一人の男が薪を背中に抱えて歩いている。その向こうには、田園で働く農民の姿が見える。手刈りで収穫した大麦を、家畜に踏ませて脱穀しているようだ。

ロバ 干し草を積んだロバと薪を背負う男性(写真:筆者撮影)

大麦を脱穀する女性たち(写真:筆者撮影)

動物で大麦を脱穀する農民(写真:筆者撮影)

ロバ・馬・ゾを使用して脱穀をしている(写真:筆者撮影)

家畜の一匹はロバだが、もう一匹は見たことのない動物で、牛でもヤクでもない。

現地では「ゾ」と呼ばれる家畜だと農民が答えた。「ゾ」はヤクとウシの交雑種で、主に農耕のために使用される家畜だという。

ヤクは成獣になるまで時間がかかるので、補完するために作られたとのことだ。

ゾ ヤクとウシの交雑種で、農耕のために使用される家畜「ゾ」(パブリックドメイン)

カナさんの提案で、部屋の窓から見えたピン川の渓谷に行くことになった。染物に使う野生植物を探したいらしい。

彼女がスピティに来た目的は、チベット仏教の僧侶が着ている赤い袈裟を染める植物を手に入れ、染物を作るため。