しかし「ボロ家報道」と自ら書いてしまったり、読んでも意味がわからない責任逃れの言い訳に終始する内容など、およそ企業の公式発表とは思えないようなものでした。

社内が大混乱に陥って指揮命令ができなくなっているのか、PR機能が破綻したのか、いずれも会社の評価が下がりかねない場面での対応が、すさまじく迷走していることが傍目にも明らかです。

会社へのダメージは意外に軽度かもしれない

自責他責を問わず、企業経営においてトラブルや評判の毀損はあるものです。社内が混乱するのもやむを得ません。そういう危機的状況においてこそ真のリーダーシップが問われます。

文春報道では“ボロ家”以外にも、「女帝」と呼ばれる、社長夫人で現会長の存在などが書かれています。組織のガバナンスや指揮系統に問題があるという内容ですが、真偽はわかりません。ただこうしたコーポレートイメージは一般消費者への好感度ではなく、特に上場企業などでは株価にも影響が出やすい重大な経営課題となります。

このまま、いなば食品はトラブルの幕引きを図れるのか、そして文春をはじめとするマスコミやネット上での追及がさらに続くのかは不明です。とはいえ、同社は非上場企業なので少なくとも日々の株価に一喜一憂する必要はない訳で、製品の売り上げがキープできるならこのまま放置も可能ではあります。

芸能人など有名人のスキャンダルも同様で、謝罪会見など開かずそのまま逃げ切った人もいます。ただ、芸能人は、逃げ切る=存在も消えるということになるため、スキャンダル叩きからは逃れられる一方、芸能活動そのものもなくなってしまうという大きなリスクを覚悟しなければなりません。

大ヒット商品をいくつも擁し、抜群の商品力を持ついなば食品。同社抜きにペットフード売り場は成り立たないほどの巨大な存在です。市場から製品への強いデマンドがあることは何よりの武器です。

どれだけマスコミやネットに叩かれても、今回は商品に関する不祥事ではないため、肝心の商品が売れてくれさえすれば、逃げ通せる可能性は十分あるのではないでしょうか。

今回の事件は同社も事実をある程度認めているという潔さはあるので、実際のペットフードユーザーにとっては他人事ととらえてくれ、愛猫愛犬が同社の商品を好んでいるのならこれまで通り買い続けてくれる可能性は高いでしょう。