人間は温かな生き物だ。困っている人がいれば、悪い状況をいい状況に変えたくて、何かをしてあげたくなる。

もちろん、目の前の人に働きかけ、何かを変えることは大切なことだ。だけど、ただそばにいてもらえるだけでも、私たちは生きる力を手にすることができる。

人は誰しもが歳をとり、子どもたちに、仲間たちに、大なり小なり助けられて生きていくことになる。だから、「共にある」ことのすばらしさ、そのとてつもないエネルギーを、私たちはもっともっと分かち合っておきたいな、と思う。

お金を貯め、サービスを買うことで保たれる自尊心がある。でも、お互いが「共にある」なかで、頼り合い、満たし合う社会が生まれれば、私たちは、お金ごときで、誰かに支配されなくてすむ。お金が少なくとも、安心して生きていける世の中になるのだから。

「共在感」でいっぱいの社会を作るために必要なこと

高齢者への仲間入りがそう遠くない、私自身のためだけではなく、子どもたちもまた、誰かと「共にある」ことの喜びのなかで生きていってほしい。

もちろんそんな社会を作ることは簡単じゃない。でも、大事な人のそばにいて、じっと相手の思いに耳を傾けられる人間にならなることはできる。自分の子どもだけでなく、仲間に、若者に。そんな大人がどんどん増えていけば、世の中もきっと変わっていくに違いない。

<共在感>でいっぱいの社会。私の夢見る社会は、私の日常のなかで、私自身が親として、人間としてどう生きるか、という問いと地続きになっている。

著者:井手 英策