近年さまざまな形状が生み出されている自動車の扉の外側のドアノブ。しかし日本ではいまだに、握って引っ張る「バータイプ」のものが主流です。なぜなのでしょうか。

実は「ユニバーサルデザイン」の側面も

 近年テスラの「mnjドア」に代表されるように、クルマの外側のドアノブが、ドアの中に埋め込まれたタイプのものが増えています。ただ、2023年現在も日本では、握って引っ張る「バータイプ」のドアノブが主流と言えるでしょう。なぜこれがスタンダードなのでしょうか。

 それ以前の日本では、下から(あるいは横から)手をかけて引き上げる「フラップタイプ」が主流でした。

 そこからバータイプが徐々に普及していった背景について、ある自動車メーカー関係者は、「バータイプはハンドルの内側に手を下からも上からも入れることができ、バーを引いて操作するので、ハンドル位置が高くても扱いやすい。また、ハンドルが大きく、意匠性の高いものが多い」と説明してくれたことがあります。

 さらに、ミニバンや軽のハイトワゴンの増加により、ドアハンドルの位置が高いクルマが増えたこともあるようです。身長の低い人など、より多くの人の使い勝手を考え、利便性の高いバータイプが主流になったと考えられるといいます。

 他方、たとえばドイツのフォルクスワーゲンなどは、安全上の理由から、長年にわたりバータイプのドアを貫いてきました。開けやすいので、事故の際、車内に閉じ込められた人を速やかに救出できるからという理由のほか、寒い地域において手袋をしたまま楽にドアを開けられることもメリットとして挙げていました。

 しかし、フォルクスワーゲンもいまや、EVではフラップ式を採用しています。以前から、空力特性などを重視してフラップ式の採用が再び増えている傾向がありましたが、EVになりその傾向が鮮明になっているようです。

 ただ、フォルクスワーゲンID.4などのドアはフラップ内にスイッチがあり、軽く触れるとドアが開く仕組みなので、昔の機械的なフラップ式とは異なります。BMWのiXなどは、同じ仕組みでフラップがなく、単なる“くぼみ”に手を入れて開けるようになっています。