26日、投開票を迎えた静岡県知事選挙。3つの補選で全敗するなど逆風の自民党は異例の戦術を取っていました。

■「勝てば解散」の声も…岸田政権左右する“静岡決戦”

川勝平太前知事の辞職に伴い行われる今回の県知事選。
(立憲・国民 推薦 鈴木康友候補)「なんとか勝たせてください」
(自民 推薦 大村慎一候補)「どうかどうか勝たせてください、よろしくお願いします」
そんな折、永田町でささやかれるのは…
(政治ジャーナリスト 後藤謙次さん)「岸田さんの進退に直結するんじゃないかと…」
さらに、こんなシナリオまで…
(山崎拓 元自民党副総裁)「自民党の推薦(候補)が勝てば、必ず解散になるだろう」
相次ぐ不祥事で静岡に吹き荒れる逆風。一方、与野党対決の構図で、国政選挙に弾みをつけたい野党。
Q.(推薦候補が勝てば)政権交代も見えてくる?
(立憲民主党 野田佳彦元総理)「大きな流れだと思います。信じています」
さまざまな思惑が入り交じる静岡県知事選の行方は。

立憲民主党と国民民主党が推薦する前浜松市長の鈴木康友氏。選挙戦前、地元浜松の祭りに参加しました。すると、同じく地元が浜松で自民党を離党した塩谷立衆院議員の姿も。
(塩谷立衆院議員)「とにかく回るしかないな。時間もないし広いから」
(鈴木康友候補)「回るしかないですね。あと4日で告示です。あっという間」
松下政経塾の同期で盟友関係にある野田佳彦元総理が3回応援に入りました。お隣の県からはこの方も。
(名古屋市 河村たかし市長)「一言言っておくと、わしは一応名古屋の市長だで、リニアはやってもらわないかんでちゃんと。本当にわかっとるきゃこれ。まあそんなことで康友さんしっかり応援したってちょ。サンキューベリーマッチ」
経済界からは、浜松に本社を置くスズキの鈴木修相談役も支援します。県西部を中心に固い支持基盤を持つ鈴木氏。序盤は、優勢が伝えられていました。
「がんばってください」
その鈴木氏を追うのが無所属の大村慎一氏です。元副知事で、自民党が推薦しました。
(片山真人記者)「上川外務大臣です。大臣就任後初めて地元事務所を訪れました」
温かく迎えられたのは静岡1区選出、自民党の上川陽子外務大臣です。
(自民党 上川陽子外務大臣)「本当に私も思いもかけない外務大臣の要請がありまして、就任して以来きょうまで地元に戻ることができず、きょう皆さんとこうして再会ができまして、ただいま!」
週末は地元に戻り、静岡市を中心とする中部地域の支持固めに力を入れます。
(自民 推薦 大村慎一候補)「上川大臣が外交日程をキャンセルしながらSPの警護を連れながらなぜ静岡に来ていただいたのか、それはこの選挙はまだまだ厳しいからなんです。相手の背中は見えていますがまだまだなんです。何とか私をこの選挙を勝たせて仕事をさせてください。どうかよろしくお願いします」
自民党の推薦を受ける大村氏ですが、陣営は県外から自民党の大物議員の応援を受けず、党派や地域を超えた“オール静岡”で戦う方針をたてました。
(自民党静岡県連会長 城内実 選対本部長)「ちょっと言えないですけど、ある大変有名な方が(応援に)来ると。誰か勝手に決めた人がいるんですけど、私が大変怒って『勝手にやらないでくれ』と断ってもらいましたけど、誰とかちょっと言えないですけど大変有名な方です。自民党色を出さないと言うか自民党は静かに一歩引いてやると」

■「自民党の選挙じゃない」与野党“静岡決戦”で異変

女性問題で自民党を離党した県出身の国会議員…裏金問題で離党勧告処分を受けた県選出の安倍派座長…裏金問題に女性問題という不祥事が重なりバッジを外した県選出の元議員…大村氏の陣営は自民党に対するマイナスイメージが大村氏本人の選挙に与える影響を懸念しています。
(自民党静岡県連会長 城内実 選対本部長)「一つ言えることは、これは自民党の選挙じゃないんですよ。自民党が推薦したら“政治と金”にまみれた悪い人になっちゃうんですかね。私はめちゃくちゃだと思いますよ」
こうした中、選挙戦中盤…
(自民党 上川陽子外務大臣)「私の真意と違う形で受け止められる可能性があるというご指摘を真摯に受け止めさせていただき、この度、撤回をさせていただきたいと思います」
週末は大村さんの応援に地元入りしていた上川大臣でしたが、最終日の25日、大村さんと並ぶことはありませんでした。
旧民進党公認で初当選し、現在は無所属の平山参院議員は…
(平山佐知子 参院議員)「この選挙、自民党がどう、政治不信がどう、これ申し訳ない一回横においてください」
(自民 推薦 大村慎一候補)「私は今回初めて政治に出たんです。“政治と金”の問題はありません。私にはしがらみがないんです」
一方、鈴木氏のもとには立憲民主党の泉代表や…国民民主党の玉木代表が応援に入るなど、国政選挙並みの応援で与野党対決の構図がより鮮明に。
(立憲民主党 野田佳彦元総理)「同い年で一番評価できないのが岸田文雄さんです。裏金事件の真相解明いまだにちゃんとやらない。党内の処分は甘すぎる。自民党カラーを出すと候補者がマイナスになると思って、推薦をもらってる政党の名前出してないでしょ。潜ってやっていますよね」
「浜松市議会自由民主党・柳川樹一郎様お願いいたします」
野党側から支援を受ける鈴木さんを公然と一部の自民党議員が支援します。
(立憲・国民 推薦 鈴木康友候補)「『オール静岡』で日本一、幸福度日本一の静岡県を目指す」
鈴木氏も大村氏と同じく『オール静岡』を掲げます。
(立憲・国民 推薦 鈴木康友候補)「私の場合は自民党にもたくさん友人がいますので、『(自民党)本部推薦は出ているけど応援しているからな』という電話は個人的にたくさんいただいています」
水面下で激しさを増す静岡県知事選。その結果は今後の岸田総理大臣の“解散戦略”にどのような影響を与えるのでしょうか?
(政治ジャーナリスト 後藤謙次さん)「自民党は推薦をしたものの大物は一切応援に入らずに、いわゆる“ステルス作戦”で展開したんですね。全面に出て行って、負けたらその時点で岸田さんじゃ選挙に勝てないと。烙印が決定的になってしまうと。2021年菅義偉内閣の状況と極めて背景が酷似していると。菅さんの時も4月に3つの衆参両方で補欠選挙があって、そして8月に菅さんの地元の横浜市長選挙があって、いずれも大敗をして、菅さんがそのまま退陣に追い込まれたと。静岡県知事選で敗退ということになると、もはや岸田さんの命運は尽きると」


5月26日『サンデーステーション』より