イスラエルをめぐりアメリカの大学で抗議デモが続いています。2日未明、名門UCLAで座り込みをしていた学生らの所に警官隊が突入しました。デモが始まってから2週間。全米各地で当局による強制排除の動きが強まり、逮捕者が続出しています。

■名門UCLAでもデモに警察突入

1日未明、構内で激しい衝突が起きたUCLA。1日夕方ごろ、警察が抗議活動の解散命令を出したことを機に、逆にこれまでよりも多くの人が集まりました。抗議のテントが張られている場所から少し離れた所には、大量のロス市警がスタンバイ。一触即発の緊張感が構内に張り詰めます。

そして、日付が変わった午前1時過ぎ。バリケードを乗り越え、警官隊がテントの広場に乗り込んでいきます。強制排除が始まったのですが、この後、事態は意外な展開に…。

「30人以上の警察官が何とか規制線を維持しようとしていますが、200人ほどのデモ参加者によって、野営地から完全に押し出されるように後退していきます」

突入から約30分で、警官隊が撤退しました。

CNN ワット記者
「警官隊はデモ集団が分散すると期待していたかもしれませんが、実際は違いました。少しは減っていますが、まだまだ大きな集団です」

撤退から1時間半が経過したころ、警察が再び動きました。少なくとも数十人が拘束されたとみられています。

拘束された人
「このデモは支持する価値がある。私はユダヤ人です。ここは私たちの大学なんです」

■「大学は軍需産業へ投資やめて」

アメリカメディアは、ここ最近、全米で警察の介入が増えていると伝えています。それだけ、今回の熱の高まりを大学側が警戒しているのかもしれません。AP通信によると、ウィスコンシン大学で34人、フォーダム大学で15人、テュレーン大学で6人、テキサス大学で少なくとも17人、ダートマス大学で90人が逮捕されました。

そもそも、学生たちの訴えは大学側に対して行われています。イスラエルの軍需産業と関わりのある企業に、大学が投資することを止めさせたいのです。

コロンビア大の学生
「大学はガザの大量虐殺をめぐる我々の要求に応えるべきです。大量虐殺に加担するようなもので、やめるべきです」

この要望は、今行われている全ての大学の抗議活動が掲げている条項です。

■学生に譲歩 デモ収束した大学も

なかには、学生たちの抗議が実を結んだケースもあります。1つが名門私立ブラウン大学。大学側は、学生たちの要望を聞き入れ、話し合いの場を設けることで合意しました。学生たちはテントを撤去しています。

デモ参加者
「投資をやめさせる交渉で、デモは大きな勝利で終わりました。大学側から実質的な変更を引き出すことができました」

ノースウェスタン大学でも、大学の投資のやり方について「諮問委員会を設置する」という確約を勝ち取りました。

アメリカにおいて、学生たちの行動が大学を動かすことは決して不可能ではありません。現地でこの熱に触れている日本人学生はこう話します。

コロンビア大学教育大学院 熊崎雄大さん(24)
「平和的かつ勇敢に立ち向かっていた学生がいたなかで(大学側が)暴力と権力によって暴走するのは、アカデミックリーダー(大学長)としてあるべき行為ではないなと確実に思う。(大学側は)『反ユダヤ主義』というレッテルを貼ってはいけない。彼ら(学生ら)がやっていることは、大学=自分が所属している組織が、暴力に加担しないことを求めている。イスラエル人がユダヤ人が嫌いだと言っている人は全くいない。野営キャンプの中にユダヤ人がいるんですよ。(大学側は)簡単な言葉で、暴力を容認するような正当化するような言葉につなげてほしくない」


■ハマス“完全な”撤退求める

イスラエルとハマスの戦闘開始からすでに200日以上が経過し、多くの命が失われています。現在、停戦に関する協議が行われていますが、交渉の行方はどうなるのでしょうか。

複数のメディアによると、イスラエルがハマスに対して停戦案を提示している状況です。その内容は、ハマスが人質33人を解放すれば、イスラエルが収容する数千人のパレスチナ人を解放し、6週間程度の停戦。さらに、ガザ地区から軍を段階的に撤退させるなどの内容です。さらにその先に“恒久的な戦闘休止”を話し合う用意もあるということです。

この停戦案に対し、ハマス側は、停戦の文案に「“完全な”撤退」など文言追加を要求。ネタニヤフ内閣は、2日に内容を議論していくということです。その結果を受け、ハマス側は4日までに最終的な回答を提示する見込みとなっています。

これまで何度も停戦交渉が行われたが、そのたびに双方の主張がぶつかって合意に至りませんでした。今回はうまくいくのでしょうか。中東情勢や難民研究が専門の、慶應義塾大学・錦田愛子教授に聞きました。

錦田愛子教授
「戦闘をどう終結させるか、イスラエル政府内で揺れている。人質解放の動きが具体的に進めば、これまでとは違う展開になる可能性がある。ハマス側が求める“完全な”撤退に対し、表現を曖昧(あいまい)にして合意する可能性もある」

ハマス側が求める“恒久的な戦闘休止”の可能性があるのでしょうか。

錦田愛子教授
「ネタニヤフ首相は腹を決めかねている。内閣には、ガザ侵攻の完遂を望む勢力がいる。一方、戦闘継続よりも、交渉での人質解放を望む世論もある。さらには、アメリカの手前、簡単にラファ攻撃はできない。そのうえで、戦闘が終わればネタニヤフ自身が失脚する可能性もある。そのため、今すぐ“恒久的な戦闘休止”は難しいのではないか」

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