大谷翔平選手の元通訳・水原一平被告(39)が銀行詐欺などの罪を認め、検察との司法取引に合意しました。

■「歯の治療」930万円だまし取る

水原一平被告が違法スポーツ賭博のために、通訳を務めていた大谷翔平選手の口座から不正送金した額は約1700万ドル、日本円で26億円余り。その内の6万ドル約930万円について、新たな手口が明らかになりました。

それはギャンブルではなく、歯の治療費。時期は去年9月。大谷選手が右ひじの手術を行った頃です。水原被告は歯の治療費を大谷選手に相談。大谷選手は同意し、ビジネス口座の小切手にサインし、6万ドルを水原被告に渡しました。しかし、水原被告は小切手は使わず、承諾がないまま大谷選手のデビットカードで支払いました。6万ドルの小切手は現金化し、自分の銀行口座に入金していたのです。

おととし3月に撮られた水原被告の写真。上の前歯には一部すき間があるように見えます。しかし、今年3月の写真を見てみると、少なくとも前歯が白くなり、歯並びが整っているのが分かります。これが930万円をかけた歯なのでしょうか。

■連邦検察 異例のスピード起訴

さらに、結婚しているにもかかわらず、納税申告書に独身と偽り、より多くの控除を受けていたことも分かりました。連邦検察によると、水原被告は不正送金した銀行詐欺の罪や、嘘の納税申告書を作成し、追加収入を申告しなかった罪を認めたため、起訴したということです。自ら有罪を認める、司法取引が成立したとしています。

CNN
「これで大谷選手が関与していたという疑惑は晴れ、検察も大谷選手が被害者であるとしています」

連邦検察はコメントで厳しい言葉を使っています。

マーティン・エストラーダ連邦検事
「被害額は甚大で、正義の鉄槌(てっつい)を下すことに全力を尽くす」

今回の件について、カリフォルニア州の連邦検察で刑事部次長を務めていた専門家は、異例の早さだとしています。

ロヨラ・メリーマウント大学 ローリー・レヴェンソン教授
「例えるならスター・トレックの“ワープ”並みです。水原被告に前科がないことを踏まえれば、被害額は膨大でも、水原被告は責任を認めましたし(検察は)手早く片づけられるので、双方がこの結果を望んでいたはずです。(Q.無罪主張をすれば)そうなれば何カ月もかかります。水原被告が有罪答弁をすれば裁判手続きを減らせるし、大谷選手の潔白も証明できるので双方の利益になります」

■最大禁錮33年も…「量刑は6〜7年か」

水原被告の量刑は最大禁固33年、罰金125万ドル(約1億9000万円)になるとされています。ただ、司法取引によって刑期が短くなるのではないかといいます。

ロヨラ・メリーマウント大学 ローリー・レヴェンソン教授
「水原被告の量刑ですが、司法取引にある量刑ガイドラインを参照すると禁錮33年にはならないでしょう。おそらくは…禁錮6〜7年くらいになるでしょう」

司法取引の合意書には、こんな内容も記されています。

司法取引の合意書
「被告には被害者らに対し、賠償金の金額を支払うことが求められる。大谷選手へは約26億円。内国歳入庁へは追徴額約1億8000万円であると考えている」

罪状認否の手続きは日本時間15日、ロサンゼルスの裁判所で行われる予定です。罪状認否後、直ちに水原被告が収監されることはなく、早くても判決言い渡しに数カ月、実際の収監には1年近くかかる見通しです。


■異例のスピード起訴 大谷選手の影響は

カリフォルニア州の弁護士資格を持つ、村尾卓哉弁護士に聞きました。

(Q.司法取引をすると、刑が軽くなるので被告側にメリットがありますが、検察側のメリットは何ですか)

村尾卓哉弁護士
「メリットは“時間や労力の省略”だといいます。司法取引がない場合、陪審裁判が行われます。陪審裁判では全員一致が必要で、1人でも無罪を主張すると仕切り直しになります。司法取引の合意があると陪審裁判を省略できます。また、敗訴リスクも避けられます」

(Q.訴追から司法取引まで“異例のスピード”ということですが、その背景には何がありますか)

村尾卓哉弁護士
「アメリカの重要な産業であるスポーツ界を揺るがす重要な事件。弁護側・検察側の双方が、疑惑がかかったまま大谷選手のプレーが続くことを望ましくないと思ったのでは。スター選手の疑惑を晴らすために、相当な人員と労力をかけたのではないか」