浜松市にある静岡県内唯一の屋内スケートリンクが5月いっぱいで閉鎖することが決まりました。約60年の歴史がある“聖地”の閉鎖に利用者からは困惑の声が上がっています。

“ハマスポ”の愛称で親しまれている浜松市中央区の「浜松スポーツセンター」。毎年 秋から春にかけてスケートを楽しめる県内唯一の屋内スケートリンクで、多いときは一日1000人以上が訪れます。50年以上利用しているという男性は、このリンクには思い出がつまっていると振り返ります。

(50年以上前から利用)

「15歳の時にここへ来て、今は70歳。一番混んでいるときは貸し靴が全部なくなり靴が空くのを待っている。年代を関係なく友達になれる」

「浜松スポーツセンター」の屋内スケートリンクは1966年にオープン。初心者から経験者まで気軽にウインタースポーツを楽しめるスポットとして親しまれてきました。しかし、オープンから約60年が経過し5月いっぱいでの閉鎖が決まりました。施設の再整備計画では当初、スケートリンクは残る予定でしたが老朽化と電気代の高騰から急きょ方針を転換。リニューアルするにも多額の資金が必要になるため担当者は「苦渋の判断だった」と明かします。

(浜松スポーツセンター 鈴木 直樹 社長)

「さびも落ちてくる。人海戦術でネットを張って下にさびが落ちないような努力はしていた。お客様の安全が第一そのことや電気代のことを含め総合的な判断で閉館せざるを得なかった」

5月いっぱいでの閉鎖が決まった「浜松スポーツセンター」の屋内スケートリンク。3度のオリンピック出場経験がある浜松市出身の伊藤亜由子さんも、このリンクで練習していた一人です。

(スピードスケート元五輪選手 伊藤 亜由子さん)

「休みの日も、父と一緒に来たときは売店で食事して、午前も午後も滑っていた。このリンク、小学生のときは1日中いました」

伊藤さんは原点である“ハマスポ”のリンクで、子どもたちにスケートの楽しさを伝えたかったと話します。

(スピードスケート元五輪選手 伊藤 亜由子さん)

「育児や仕事が落ち着いたら、クラブの子どもたちを教えたいと思っていた。やっとここでスケートを教えることができると思っていた、すごく残念。残念な気持ちも大きいと思うが、希望だけは捨てずに、これからもスケートを頑張ってほしい」

閉鎖が決まり、このリンクを拠点に活動しているクラブチームは窮地に立たされています。小学生から大人まで12人が所属している「浜松フィギュアスケートクラブ」。施設側から閉鎖の連絡があったのは3月末で、急な決定にメンバーや保護者は困惑しています。

(浜松フィギュアスケートクラブ 小学生)

「思い出が詰まっていて、なくなるのは嫌だなと思います」

(浜松フィギュアスケートクラブ 保護者)

「練習する場所がなくなるのが一番大きいですね。ショックが。子どもにどう伝えようかとまず考えましたね」

浜松にスケートリンクがなくなると、愛知・豊橋市や名古屋市まで通わなければならないといいます。インストラクターの河村さんは、今後、クラブの存続も難しくなるかもしれないと危機感を募らせます。

(浜松フィギュアスケートクラブ 河村 祥子さん)

「下(の世代)がどんどん入ってこないと、どんな競技でもそうだが、選手層が広がらなくなるのが一番危惧しているところです」

このリンクは、アイスホッケーやスピードスケートのクラブチームも“拠点”にしています。スケートリンクの閉鎖により、県内でウインタースポーツをする子どもが減ってしまうことが懸念されます。

(アイスホッケークラブ 保護者)

「ホッケーがどういうスポーツかイメージできないと思う。始めてくれる子は減ってしまう」

県スケート連盟などは、県内に新たなスケートリンクの建設を求め署名活動を行っていて、今後、県や浜松市にも要望したい考えです。

(浜松フィギュアスケートクラブ 高校生)

「小学1年生からこのクラブで練習していますが、第2の家のような存在だったので、すごくさみしかったのが一番です。このまま残すのは難しくてももう一度 浜松にリンクができてくれたら、嬉しいと思います」

(浜松フィギュアスケートクラブ 河村 祥子さん)

「子どものころは静岡にも いくつかリンクがあったが 今は浜松にしかない。県東部の方も、ここまでスケートがしたい場合は遊びに来たり練習しに来たりする場所になっているので。新しいリンクができてくれるのが一番願いとしてはあります」