6月14日(金)に放送された「ガイアの夜明け」(毎週金曜夜10時)のテーマは、「シン・ごみ戦争」。ごみの処理には全国で2兆円もの税金が投入されているが、処理費用以上に深刻な問題が迫っていた。日本各地の最終処分場が平均23年ほどで限界を迎え、ごみが行き場を失うとされているのだ。
プラスチックの分別に動き出した自治体では、収集作業が増える中、人手不足に悩んでいた。そこで、ごみ収集の効率化によって問題を解決しようと立ち上がった鉄道会社を追う。
また、日本以上にごみ問題が深刻なのが、急激な経済成長の真っ最中にある東南アジアだ。「スモーキーマウンテン」に代表される“ごみ山”が各地に点在したフィリピンでは、日本の資源リサイクル業者が、問題解決に挑んでいた。日本とは違う環境の中、“捨てたらごみ、使えば資源”をモットーに奮闘する最前線に密着した。

【動画】深刻化する“ごみ問題”の最前線…最終処分場が20年ほどで限界に

鉄道会社が仕掛ける「ごみ問題」解決の秘策…「清掃員不足」に挑む!


深刻化する“ごみ問題”の最前線…最終処分場が20年ほどで限界に:ガイアの夜明け
2年前、「プラスチック資源循環促進法(プラ新法)」が施行され、全国の自治体に分別回収の努力義務が課せられることになった。回収の対象となるのは、食品トレーやプラマークのついたプラスチック製品などだ。
東京・大田区では一昨年から順次プラ分別を始め、収集日を1日増やした。現在3分の1のエリアで実施しているが、分別が徹底されていないことも。その場合は清掃員がごみに注意喚起のシールを貼り、置いていくことになるため、彼らの負担は増えていた。

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その大田区では来年4月、プラごみ回収を区内全域に拡大しようと計画していた。しかし、人手不足が慢性化している中、限られた人員で効率よく、プラスチックの収集を実現しなくてはならないという課題が。
そこで頼ったのが、私鉄大手・小田急電鉄だ。鉄道が本業の小田急にとって、実はごみは切実な問題だという。列車や沿線で展開する商業施設やホテルからは多くのごみを排出しているからだ。

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そこで小田急は、新たにごみの収集・運搬のサポートをする「WOOMS(ウームス)プロジェクト」を立ち上げた。総勢30人のメンバーの多くは鉄道事業の経験者。リーダーの正木弾さんは、「(鉄道は)一般の方たちには気付かれないインフラを守る仕事なんですよね。収集の仕事もそういった仕事」と話す。

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この日、正木さんたちは、大田区役所からごみの収集を委託されている「櫻商会」(東京・大田区)を訪れた。収集の現場では、これまで配布される地図などはアナログな紙がベースだったが、櫻商会では、去年12月から正木さんたちが開発したごみ収集を支援するアプリ「WOOMS」を導入。各車両にタブレット端末を搭載し、作業や運搬の効率化を図っている。

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区の収集エリアが拡大すれば、その分、ごみの量が増える…。課題を探ることが、今回の正木さんたちの目的だ。大田区の中でも特に道路が狭いエリアを回る収集車の後を追うと、ある集積所では大量の発泡スチロールが捨てられていた。ごみの量は日によってまちまちで予測不能。開始5分で、荷台の大半が埋まってしまった。

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収集車を追いかける正木さんがタブレットをチェックしていると、画面上の集積所マークが未収集の“オレンジ”から収集完了の“緑”に変わった。これは「WOOMS」が自動で集積所を検知し、ごみの取り残しを防止する機能だ。

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開始から1時間すると、担当ルートの半分ほどで荷台が満杯になってしまった。軽トラックの積載量が少ないためだ。こうなると、一度リサイクル工場に行き、プラごみを下ろしてから再び回収に出なければならない。往復が増えれば、その分、業務の負担も増えてしまうのだ。

1週間後、正木さんたちは再び櫻商会を訪れ、2台の収集車に協力してもらい、あることを試そうとしていた。この日も収集を始めると2台の軽トラックはすぐに満杯になった。
一度リサイクル工場でごみを下ろし、2回目の収集に向かうと、正木さんが予想していた事態が発生する。車によって回収率に差が生まれていたのだ。

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そこで、正木さんは、WOOMSの“ある機能”を使うことを提案する。果たして問題を解決することはできるのか?

ごみを宝に…生ごみを肥料に変える技術で、日本と世界を救う!


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栃木・益子町。イチゴの生産量が日本一の栃木の中でも、益子町はイチゴ栽培が盛んな地域。その益子町で人気のイチゴ狩り農園「マシコストロベリーファーム」。この農園のこだわりは有機肥料にある。しかも、その有機肥料は益子町の家庭から出た生ごみが原料だという。
実は益子町、10年前から生ごみの堆肥化を町ぐるみで進めていて、生ごみだけを週2回、分別回収している。強制ではないものの、いまでは住民約2万人のうち半数近くが協力。

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以前は焼却処分されていたという生ごみが運ばれるのは「共和化工」という会社。
ここに1日に集まる生ごみは1トン以上。ここ共和化工では微生物の力で生ごみを堆肥に変えているという。
その工程は、微生物が多く含まれる土を生ごみの上にかけていく。

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微生物が満遍なく行き渡るよう1時間かけて混ぜ合わせ、数日置く。
するとごみから湯気が出てくる…。生ごみの80%は水分といわれ、その水分が湯気となって出てきたのだ。
サーモグラフィーで見てみると、表面温度は70℃以上、最も熱いところで100℃近くになるという。これは微生物が酸素を取り込み高温発酵しているから。この高温で活発に働く微生物があらゆる有機物を分解していくのだ。床に敷かれたパイプから常に空気を送り込むことで菌を活性化させるのだ。
これまで燃やすしかなかった生ごみが、1カ月半ほどでサラサラの堆肥に。この資源リサイクル事業で、年商80億円を誇る共和化工。吉村俊治社長は、堆肥を指差し「我々からしたら宝物」と話す。

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共和化工のビジネスは海外にも広がっている。その一つがフィリピン。
というのも、フィリピンではこれまで廃棄物の焼却が禁止されており、いろいろなごみを積み上げた野ざらしの処分場が各地に点在していた。しかし政府は、2021年に野ざらしの処分場335カ所を閉鎖。今後は衛生的な埋め立て処分場の建設を進めるとしているが、深刻な「ごみ問題」は続いている。

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フィリピン・ミンダナオ島の中心地・ダバオ。共和化工で海外事業を担当する松澤奏宏さんと中村規代典さんがやって来たのは「ダバオ・サーモ・バイオテック社」。実は共和化工はこの会社と組み、2017年から生ごみの堆肥化事業を始めていた。その堆肥は「ドクターボー」という商品名で既に販売されていて、すでにカカオ農園やバナナ農園で使われている。

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二人が向かったのはダバオ郊外の食品加工工場。案内された先にあったのは大量のバナナの皮や、加工の工程で出たバナナの端材など、すべて商品化できず残った生ごみだ。フィリピンでは、こうした工場から出た生ごみも焼却処分は禁止されている。
そのため、いまだにバナナの皮などの生ごみを不法投棄する業者は後を絶たない。
しかし、この会社では環境意識の高まりから、わざわざ処分費用を払って、共和化工の協力会社に引き取ってもらっている。「当初は廃棄物に対してお金を出す文化がないと聞いていたが、徐々に大手から変わってきている。うちとしては当然ビジネスチャンス」と松澤さんは話す。

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ダバオにある共和化工の技術を使った堆肥化工場には、1日20トン、実に益子の20倍の量の生ごみが集まる。そこへ去年12月以来の視察にやって来た松澤さんと中村さん。
すると、2人の表情がいきなり厳しくなった。工場で作られている堆肥の質が、日本と比べて悪くなっていたのだ。一体何があったのか……。

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