トヨタが世界に誇る「ランドクルーザー」。現在、300・250・70がラインナップされていますが、それらにはどのような違いがあり、250が目指すものは何なのでしょうか。

チーフエンジニアが語るランドクルーザーとは

 2024年4月18日にトヨタは新型「ランドクルーザー250」を日本で発売しました。
 
 その翌週には、250をはじめ、すでに発売されているランドクルーザーシリーズとなる300、70、そして250の前身とも言える150(プラド)をそれぞれ体感しました。
 
 トヨタがランドクルーザーシリーズとして目指すものとは、どのようなものなのでしょうか。

 ランドクルーザーは、「TOYOTA JEEP BJ SERIES」として1951年に誕生しました。

 そこから2024年までフルモデルチェンジを繰り返すと共に、役割と使命によって大きく3つに分けられていきます。

 ランドクルーザーシリーズの王道かつフラッグシップとなる「ステーションワゴン」では常に時代の最新技術を導入し、シリーズとしての進化を担っています。

 また1984年に登場してから現在も基本設計を変えないまま世界中で活躍する70は「ヘビーデューティ」に分けられます。

 70は、業務用途や過酷な環境での使用を重視した普遍的な価値を担っています。

 そして、1985年に登場した70(WAGON)から始まった「ライトデューティ」は、悪路走破性をベースに快適性を付与した、日常生活や実用を重視してきました。

 なお1990年には、日本をはじめとする一部の国や地域で「PRADOと名付けられ、2009年に登場した150と歴史を重ねてきました。

 このように異なる役割と使命を持ってはいるものの、ランドクルーザーシリーズとして譲れない「どこへでも行き、生きて帰って来られる」というコンセプトは共通です。

 そうしたなかで、モデルチェンジを重ねるごとに「ライトデューティ」を担う150は、それまでのモデルよりもやや高級や豪華な路線に寄りすぎてきたと言います。

 そこで、今回の250では「原点回帰」をテーマにランドクルーザーシリーズの真ん中のポジションとするべく様々な進化を施しました。

 実際に300・250・70・150 SERIESそれぞれを体感してみると、見た目やスペックだけでは語れない個性がハッキリと分かります。

 また従来型となる150に対しての250の進化度合いは凄まじいことも体感出来ました。

 それでも「信頼性・耐久性・悪路走破性」というランドクルーザーの共通テーマはしっかりと受け継がれていることも感じ、まさにシリーズとしてグローバルで戦うランドクルーザーブランドの奥ゆかしい部分が見え隠れしました。

 ランドクルーザーブランドや、新たな250について、チーフエンジニアの森津圭太氏は次のように話しています。

「ランドクルーザーは世界中の道を走り込んできた世界基準のクルマです。

『どこへでも行き、生きて帰って来られる』クルマとして人の生活を支えてまいりました。

 そして世界のお客様の生活を支える質実剛健なクルマとしての歴史もあります。

 日本では高級SUVと言われることもありますが、あくまでもランドクルーザーの基本はオフロード(悪路走破性)です。

 このランドクルーザーが積み重ねてきたものによって、世界中にトヨタの品質、耐久性の高さが評価され、結果的にトヨタへの信頼につながったというふうに言われています。

 今回250 SERIESは、高級志向に寄っていた150の存在を、ランドクルーザーの中心的存在にするため、本来の役割と使命に原点回帰帰させました。

 シャシは300と共通な部分はありますが、デザインやスペックなどで250らしさを持たせています。

 また開発においては、トヨタの田原工場に新たなフレーム製造工程を導入しました。

 これにより、品質を保ちながら大量生産を実現していきたいという風に考えています。

 また発売はある意味でスタートです。これからも現地現物として、世界中の過酷な道を自らハンドルを握り走ることにこだわって開発をしていきます。

 最後にランドクルーザーの未来については、ランクルネスとしての『信頼性・耐久性・悪路走破性』やメンテナンス性・部品入手のしやすさを継承させていきます。

 そして、新たな価値としてランドクルーザーらしい先進技術やマルチパスウェイを取り入れて、ブランドを残していきます」

プラドでない「250」どんなクルマ? 悪路走破性が1番なのはどのモデル?

 スクエアな見た目やヘッドライトが丸目と角目が用意されるなど、世界初公開時から注目されていた250。

 内外装デザインやパッケージにおいても細かな部分でこだわりが存在します。

 エクステリアデザインは、一目見て250と分かる造形を実現。

 ボディサイズは、ほとんど300と変わりませんが、実際には最も幅のあるタイヤ部分からキャビンにかけて絞り込まれています。

 さらには、フロントやサイド、リアなどの随所に角取りや凹みを設けることにより、300とは異なるスクエアな印象を与えました。

 インテリアでも直立したAピラーによる死角減少や水平なダッシュボードかつ低いボンネットフードなどを採用することで、300よりも前方が見えやすいことから悪路での扱いやすさも特徴です。

 その他、前席ウインドウ下部の位置を300&150 SERIESよりも下げたことで圧倒的な視界の良さを確保しています。

 プラットフォームは300やレクサス「LX」などに使われる「GA-F」ですが、250ではほとんどの部分を専用に作り直していると言います。

 さらに250では、電動パワーステアリングの採用や新たなスタビライザーなど悪路走破性を高める新たな機能も備わっています。

 また日本では、当初こそガソリン車とディーゼル車の2タイプですが、開発陣によれば「今後米国や中国に導入するハイブリッド車を日本に導入する」と話しており、ランドクルーザーとしてのマルチパスウェイも期待出来ます。

「ランドクルーザーシリーズ」

 そんなランドクルーザーシリーズですが、悪路走破性という部分では、どのモデルが1番優れているのでしょうか。

 前出の森津氏や他の開発陣は口を揃えて「300です」と答えます。

 人により300と250の差は異なるようですが、その差は何なのでしょうか。

 とある開発陣によれば、「サスペンション構造など250はより求めやすい価格という部分などを考慮した設計となることや、最新技術は300に採用している、ということが挙げられる」と話しています。

 また続けて「ただし、極限の状況下でなければその差は分からないと思います」と話していました。