知的障害+自閉スペクトラム症の長女とイヤイヤ期の次女の育児に奮闘しながら、自閉症育児の悲喜こもごもを発信しているにれ(@nire.oekaki)さん。子どもの成長への不安や悩みを赤裸々に描いていて、大きな反響を呼んでいる。

にれさんが新たに描き下ろした漫画とエッセイを加えた電子書籍「今日もまゆみは飛び跳ねる〜自閉症のわが子とともに〜」が発売された。


ウォーカープラスではこの電子書籍の中から特に印象的な漫画を、にれさんのエッセイと共にご紹介。日々思い悩みながらもなんとか前に進むママと、確かに成長していく娘の姿を描く、共感必至エピソードをお届けします。

■音楽療育について
昔、「すべての芸術は音楽に憧れる」と言った哲学者がいるそうです。

意味の解釈は様々なようですが、発達に遅れのあるわが子に音楽療育を受けさせたとき、その言葉の意味が分かったような気がしました。コミュニケーションが難しく、あまり笑わないまゆみが満面の笑みを見せてくれたのです。リトミック教室へ入れなくても、Eテレの歌に合わせて反応できなくても、まゆみのわずかな仕草の変化から「この子は音楽が好きなんだ」と感じていたのは間違いじゃなかったと胸が震えました。

興奮冷めやらず、家での手遊びにぴあちぇーれで習ったものを取り入れてみると、それまでとは違う反応でまゆみからお手手クレーンで催促してくるようになりました。ひとたび気に入るとそればかりになるまゆみです、あまりのしつこさにもう勘弁して…と思うこともありましたが、一緒に遊べるようになった嬉しさもあり「ラララ大根」「ちゅっちゅっこっこ」「にぎりぱっちり」あたりの手遊びは嫌になるほどやらされました。

後に発達の勉強をして知りましたが、子どもと一対一で触れ合い遊びをするのは感覚統合の訓練になるほか、自閉特性のため他者認識が弱い子に相手の存在を意識させたり、発声や発語を促したりする効果があるそうです。

とはいえ、一人に有効な方法が別の子にも有効か分からないのが自閉スペクトラム症です。最終的には目の前の子どもを見て対処法をカスタマイズしていくしかありませんが、まゆみの場合はぴあちぇーれに通った3歳までの1年3ヶ月で目に見えて表情が柔らかくなっていきました。まゆみが本来備えていた発達のタイミングと重なったのかもしれませんが、確かめようもないのでまゆみには音楽療育が合っていたんだと思っています。

音楽療育をメインで行っている事業所はそう多くないかもしれませんが、音楽を使う療育は多くの施設で行われています。ぴあちぇーれの次に通い始めた2ヶ所の療育先でも歌や踊りを取り入れていて、人に合わせることが苦手なまゆみも自分なりに楽しんで参加しているようです。

びっくりしたのが、まゆみがピアノや木琴で「きらきら星」や「喜びの歌」を弾くようになったこと。それも、木琴の向きが逆でも意に介さず演奏できるのです。先生方から「どうやって教えたんですか?」と聞かれるのですが、教えたくてもまゆみは瞬く間に走り去ってしまうので私からは教えることができません。どう覚えたかは謎ですが、まゆみ自身の力で弾けるようになりました。これも音楽療育で蒔かれた種が芽を出したのかもしれません。

そんな中、5歳3ヶ月になったまゆみにぴあちぇーれから「平日夕方のクラスを新設することになったので利用しませんか?」と連絡がありました。

ちょうど保育園・療育先と併用できる時間帯だったのでその場で申し込み、首を長くして待ったつい先日、まゆみは2年4ヶ月ぶりにぴあちぇーれを訪れました。

最初はキョロキョロしていたものの、数分後には両手を広げてドリル回転しながら四方八方へ跳ね回るまゆみの姿が……大歓喜の舞はその日の療育終了まで続きました。

音楽療育の再開でまゆみにどんな変化が現れるのか、復帰第1回は嬉しさのあまり何も耳に入らなかったようなので、まずは先生の話を聞いてもらうことから始めたいと思います。