外国為替市場で、対ドルの円相場の値動きが激しさを増している。2日早朝は1時間足らずで4円超も急騰し、市場では政府・日本銀行による円買い・ドル売りの為替介入があったとの見方が広がった。政府・日銀は介入を公式には認めていないが、円売りを仕掛ける投機筋との攻防は、長期化する可能性もある。

 介入を指揮する立場にある財務省の神田真人財務官は2日、出張先のジョージアの首都トビリシで報道陣の取材に応じた。介入については「ノーコメント」を貫いたが、「必要な場合は、機内にいようが、海外にいようが、対応を取る」と投機筋を強くけん制した。

 円相場が1ドル=160円台前半から154円台まで上昇した4月29日は、5兆円規模の覆面介入が行われた可能性がある。この日は祝日で東京市場は休場しており、対ドルの円相場の取引が少ないことから、介入効果が大きいとみなされた。

 2日は、ニューヨーク市場が閉まる直前の午前6時前、1ドル=157円台半ばから、153円ちょうどまで急騰した。4月29日よりも相場が円高の水準にある中での介入は、市場関係者には予想しにくかったとみられる。外為どっとコム総合研究所の神田卓也氏は、「神田財務官は、24時間態勢で準備していると発言してきた。いつでも介入できると知らせるアナウンス効果を狙った」とみる。

 日米の金利差は解消しておらず、円相場が一時的に急騰しても、円売り・ドル買いが優勢であることは変わらない。三菱UFJ信託銀行の酒井基成氏は、「円安が収まらない中で急変動が起きれば、今後も介入を繰り返す可能性もある」と指摘する。

 長期戦となれば、介入に必要なドル資産がどれだけ残っているかが焦点になる。2022年10月に実施した介入では、1日で5・6兆円分のドルを売った。

 元手となる外貨準備は3月末で1兆2906億ドル(約200兆円)。このうち、ドルであればそのまま介入に使える「預金」は1550億ドル(約24兆円)ある。米国債などの「証券」は9948億ドル(約154兆円)あるが、介入に使うには、売却してドルに換える必要がある。「処分しやすい短期債を入れても、使えるのは50兆〜60兆円で、枯渇の懸念もある」(市場関係者)との見方がある。