【バーリ(イタリア南部)=倉茂由美子、中西梓】イタリア南部プーリア州で開催されている先進7か国首脳会議(G7サミット)は2日目の14日、インド太平洋地域の安全保障について協議し、中国や北朝鮮の脅威に対してG7として連携を強めることを確認した。経済安全保障では、中国による過剰生産問題で懸念を共有した。急速に性能が高まる人工知能(AI)を巡る規制の具体策も検討した。

 インド太平洋地域では、中国が台湾周辺や東・南シナ海などで覇権主義的な動きを強める。北朝鮮もウクライナに侵略するロシアとの軍事協力を深めている。

 経済安全保障を巡っては、中国を念頭に、補助金を受けた安価な製品の過剰生産が市場の健全な競争環境を損なうとして懸念を共有した。物資や製品の調達時に、価格だけではなく環境などにも配慮した企業を優先的に選定できるよう、G7で新たな基準を策定することで合意した。岸田首相は、「インド太平洋と経済安保はG7が国際社会をリードし続ける上で戦略的に重要だ」と述べた。

 中国は電気自動車(EV)のバッテリーや太陽光パネルなどに使用される重要鉱物の輸出管理を強めている。G7は、貿易で他国に圧力をかける「経済的威圧」に結束して対抗する方針を確認し、中国をけん制した。

 AI規制では、昨年の広島サミットで合意した包括的ルール「広島AIプロセス」の重要性を再確認し、人権侵害などを防ぐため、AI監視の基準作りなどを共同で進める方針だ。議論にはG7サミットで初めてローマ教皇が参加した。

 サミット初日の13日には、イスラエルとイスラム主義組織ハマスの戦闘が続くパレスチナ自治区ガザ情勢も議論した。議長国イタリアのメローニ首相は13日の声明で、バイデン米大統領が5月末に示した新たな停戦案への「全会一致での支持」を確認した。

 バイデン氏とウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は13日夜、安全保障協力を定めた2国間協定に署名した。協定は10年間有効で、武器支援など協力分野を明記し、将来的にロシアによる武力攻撃があった場合、24時間以内に対応を協議すると明記した。