ウクライナに侵略するロシアのプーチン大統領が14日に提案した和平交渉開始の条件に、ウクライナや米欧が反発している。ウクライナ領土の20%超の露側への割譲を意味し、事実上の降伏要求と言える内容だからだ。プーチン氏は、スイスでのウクライナに関する「平和サミット」の開幕直前に揺さぶりをかけ、停戦を期待する新興・途上国を引き寄せる狙いがあるとみられる。

 プーチン氏が交渉開始の条件としたのは〈1〉ロシアが一方的に併合したウクライナ東・南部4州からのウクライナ軍の完全撤退〈2〉ウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟断念――だ。米欧による対露制裁の解除も条件として挙げた。

 露軍が占領しているウクライナ領土は、2014年に併合した南部クリミアを含めても18%程度で、占領下にない地域からのウクライナ軍撤退も求めている。

 プーチン氏はロシアが招待されていない平和サミットについて「解決に導くのは不可能だ」と批判した。和平実現にロシアが関与する重要性を訴える新興・途上国を意識した発言だ。

 プーチン氏の提案に対し、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は14日、「最後通告だ」と述べ、嫌悪感をあらわにした。ミハイロ・ポドリャク大統領府顧問も、ロイター通信に「ウクライナに敗北を認めさせ、合法的にロシアに領土を明け渡すことを求めたものだ」と非難した。

 米国のオースティン国防長官も記者会見で「プーチンはウクライナに何をすべきか指示できる立場にはない」と非難した。