鹿児島県垂水市に7日、産婦人科の医療機関「慈愛会垂水サテライトクリニック」が開院した。市内には長く産婦人科の医療機関がなく、受診が必要な場合は鹿児島市などへ出なければならなかった。週2日の外来診療だが、市民にとって待望の施設だ。

 クリニックは、鹿児島市で今村総合病院などを運営する公益財団法人・慈愛会が、垂水市と協定を結んで市中心部に開設した。歯科医院だった木造2階建ての建物を改装。診療所は1階部分の128平方メートルで、診察室、問診室、待合室がある。バリアフリーの造りが特徴だという。

 市によると、2022年度の出生届け出数は50人。このうち40人が鹿屋市と鹿児島市で出産した。妊婦健診もこれまでは垂水市内では対応できず、鹿児島市などの産婦人科にかかる必要があった。

 クリニックでは分娩(ぶんべん)は取り扱わないが、今村総合病院の産婦人科の医師が、妊娠の診断から34週までの妊婦健診に対応し、さまざまな婦人科の病気の診療にあたる。

 垂水市によると、市内には昭和初期に助産所が12カ所あった。また、垂水徳洲会病院(2017年に閉院)に1987年ごろまで産婦人科が診療科目にあったが、以降は産婦人科を診療科目に掲げる医療機関はなかったという。

 問題を地域課題として捉えた市が、2023年に市民ニーズ調査をし、開設に向けて準備を進めてきた。幅広い年代の女性の身体的な負担だけでなく、経済的、時間的な負担の軽減につながるとしている。

 開院を前にした4月末、尾脇雅弥市長は、「ようやく産婦人科医療機関の開設にたどり着くことができた。垂水市だけでなく、大隅地域にとってもよかったのではないか」と歓迎した。市は開設に向けて3300万円を補助し、運営補助費として今年度1200万円を予算化している。

 診療時間は毎週火曜、木曜の午後1時半〜4時半。貴島佳子院長は「週2日の限られた時間ですが、多くの女性に活用してもらいたい」と話した。(仙崎信一)