衆院東京15区の補欠選挙で悪名を天下に轟かせた「つばさの党」。警視庁捜査2課は5月13日午前、公職選挙法違反容疑(選挙の自由妨害)で同党本部など関係先数カ所を家宅捜索に入った。前代未聞の選挙妨害を繰り返した「つばさの党」党首の黒川敦彦氏(45)と最下位落選した根本良輔氏(29)は、いったい何者なのかーー。前編【【警視庁が「つばさの党」に家宅捜索】「現に警察は来ていないでしょ」選挙直後、余裕綽々で語っていた党首&候補者90分インタビュー】の続き。※5月1日に配信した記事を一部改編しました。

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経営する会社の「億単位の利益」を投じている

――潤沢な資金がどこから出ているか教えてください。

黒川 僕らは不動産とM &A事業をやっている会社を持っている。この会社は共同事業者とともに、政治活動をやっていくために立ち上げた会社で、昨年は億単位の利益を上げている。いまグループ全体では30人くらいで、社員は増え続けています。

 都知事選だけでなく、来年の参院選にも10人くらい擁立する力はあります。6000〜7000万円くらいで抑えられたらいいなと考えている。会社の共同事業者たちの中には政治活動をしていないメンバーもいますが、悪名は無名に勝るじゃないですが目立って良かったねと言ってくれるくらい理解があります。

――お金儲けのための活動ではない?

根本 YouTube活動についてそういう指摘を受けますが、広告収入なんてたかが知れていて普段は10万円くらい。今回は確かにビューが伸びましたが、せいぜい60万円くらいです。供託金すら賄えません。

――最初から当選を目指さず、いったい何をしたいのですか。最終的な目標は? 

根本 国政政党になることです。次の次にあたる参院選でそれを実現する考えです。

黒川 国政政党になるのは第一段階で、最終的には僕らの力でアメリカ大統領を作るくらいまで、自分たちの勢力を伸ばしていきたいと考えています。実際、アメリカに会社の支店を2年以内に出す予定もある。もちろん、簡単な道のりではないことはわかっていますが本気で考えています。

――NHK党と活動手法が被るところも感じますが、彼らを意識していますか?

黒川 僕はN党の創立メンバーではありませんが、衆院、参院と2回の選挙をN党候補として経験したし、最後は幹事長も務めた。立花(孝志党首)のやってきたことはずっと見ていたので、彼らのやってきたことの功罪は僕が一番わかっている。

 旧N党は瓦解しましたが、彼らの上位互換をやっている側面もあります。N党で学んだことを活動に生かしていることは事実で、例えば炎上という手法。弱い者が権力と闘う際、特にインターネット上においては炎上が有効的な手段であり、今回まさに成功した。

ガーシーはただの悪人。我々は正義の活動をしている

――今回、N党は全く存在感を示せなかった。都知事選でN党は30人を擁立するとしているが、ライバルとして意識するところはありますか?

黒川 票では彼らに負けましたが、インターネット上では我々の方が炎上し、立花の方から乗っかってきたくらいだった。勝負は決したと思っていて、もう僕らから立花に言いたいことはない。都知事選ではポスターで金儲けするとか話していますが、失敗するでしょうね。そもそも僕はお金儲けのために政治をやるという彼のスタンスには最初から共鳴していません。

―― N党ではガーシー氏が国会議員になるという「奇跡」が起きた。ガーシー氏の末路についてどう思っていますか?

根本 彼は明確に常習的脅迫をしてしまっていたし、元々、有名になる前は詐欺をしていたような人間。つまり、元々悪い人。立花に乗せられてヒーローになるのかと思ったら、結局は悪い人で終わったというだけで、根っこが我々と違う。我々は正義で動いています。

――子供に見せられるものではないという意見についてはどう思いますか?

黒川 子供にこそ見せるべきだと思っている。僕は最終演説で集まった若い人たちに、大人の言うことなんか絶対に聞くな、と呼びかけました。合法に活動しているというのにあれやるな、これやるなと言うのは自由主義社会において最もやってはいけない行為です。

 僕らがやっていることを批判する気持ちはわかりますけれど、実はやっていいことなんですよ、合法なんだから。世の中がクリーンになりすぎていて、なんでも過剰に規制したり、優等生ぶるヤツの発言ばかり流布されている。でもそいつらこそが世の中を悪くしていると思っている。

 何かを変えるためには、他人から批判を浴びてもやらなくてもならない。だから、僕は若い人たちに大人の言うことなんか聞くなと訴えているわけです。僕はそれを今回、若い世代に対して可視化できたと考えている。

子供もいますが全く恥じることはない

――お二人にはお子さんもいるが、自分の子供たちにも自信を持って見せられたと考えていますか?

黒川 今回の件では連絡を取っていませんが、見てもらって何ら差し支えない。23、22、20歳と息子が3人います。1人も連絡してこないですがね。もう若い子たちはテレビなんか見ていないんでしょう。他の件でもいつもこんな感じなので、また父親が何かやっている、くらいなんじゃないですか。やりすぎくらいには思っているかもしれないですが、父親がやろうとしていることは理解してくれていると思います。

 自分がやってきたように、やりたいことはやれと言って育ててきました。うちの子供たちは普通のご家庭のお子さんに比べたら、父親に似て常識に縛られない子たちです。ただ、周囲からは概ね評判がいいですよ。

根本 僕の場合は親、兄弟とは絶縁状態で連絡を取っていません。ただ自分が持っている家庭は円満で、嫁さんもSNSで援護射撃をしてくれている。嫁の母親も我々と同じような思想を持って応援してくれている。もちろん、黒川さんと同じで、二人の子供(うち一人は6月に出産予定)に対して全く恥じるところはありません。

――お二人とも高学歴です。黒川さんは大阪大学工学部を経て、NEDO (国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)で働いていたこともある。エリートの道から一転、なぜこういう道を歩むことになったのですか。大抵の人はどうしてそんな立派なキャリアを捨ててと思ってしまいます。

黒川 常識を重んじる世の中がクソだからです。そいつらこそが子供たちの未来をぶっ壊している。その代表こそが政治家じゃないですか。だから、僕らはまず政治家をぶっ潰そうと思っている。

 NEDOに行ったのはベンチャーを作るためで、経産省や文科省、財務省の役人とも仕事していました。大阪大学にベンチャーを作る部署を作ったのは僕で、大学の中でここまでやるのかというくらいたくさんのベンチャー作りましたよ。

 ただベンチャーを作っていて思ったのは、出る杭は打たれる傾向が強いこと。新しい産業を作らないと日本は発展どころか維持できないというのに。その経験を通して、日本はダメだと強く思って政治運動を始めた。

 新しいことをやる若い人たちを育てることが大事だと考えている。若い人たちが新しいことをやって、それを面白いと思う人がいなければ誰も新しいことにチャレンジしない。

 イーロン・マスクを想像して欲しいんですが、絶対に人の言うことなんか聞かないでしょう。海外ではそういう起業家たちが世界最先端の企業を動かしている。常識は過去の産物です。

GAFAMに就職希望から東大大学院を中退してナンパ師に

――根本さんも芝浦工大から東大の大学院中退。ナンパ師を経て現在は恋愛コンサルタント会社を経営しているということですが、どこで生き方が変わったのですか?

根本 僕がナンパを始めたきっかけは大学院生の23歳のとき。レールから外れたのはそこからです。それまではGAFAMに就職したいと思っていて、まずはスタンフォード大学で博士号を取ることを目標に勉強していた。

 高校までは部活や勉強に重きをおいていて、大学に入って恋愛も始めてはみたが学校では習わないことだし、女性のことがよくわからなかった。女性が何を考えているのか知りたいと考えてナンパを始めてみると、こっちの方が絶対に面白いとなって切り替えた。ナンパコンサルの経営は順調で、今後も両立していくつもりです。昨日も今回の選挙を通じて僕のことを知ったと、新規で申し込んでくれた人がいました。

――なぜそこから政治の道に?

根本 ナンパコンサルを始めたらすごく儲かり始めて、一回1500万円くらい納税したことがあったのです。その時に何でこんな高い金を払わなければならないと思って、政治のことが気になり出した。そして、「桜を見る会」の不祥事や政府のコロナ対策を見て一気に政治に対する不信感が募り出したのです。

 それから黒川さんと出会い、本気で闘おうとしているところにひかれました。1億円自分で借金して参院選に出たりとか普通じゃない。安倍総理にも本気で喧嘩を売っていたし、命を狙われてでもやる覚悟を感じました。

黒川 20代の彼がここまでやってくれているのは嬉しいし、期待しています。僕は老害を批判しているので自分が老害にはなりたくない。若い人たちに早くバトンタッチしたい気持ちでやっています。

――支持してくれている人たちはどういう人たちがいるのですか?

根本 社会的地位が高かったり、お金を持っている人は意外と多いですよ。スポンサーとか共同事業をやっている方の中にも東大を首席で出ているような方もいます。日本25位くらいの時価総額の企業を経営している一家の方です。黒川さんに1億円貸してくれた人も1000億円の資産を持っている人。我々の言っていることは、宗教団体への批判とか結構小難しい話があるので割と知能が高い人が多いんですよ。もちろん、すごいアホもいますが。

黒川 デモをやれば数百人集まることもある。我々に共鳴している人たちは少なからずいることは今回の選挙で実感できました。常識に囚われていては何も変わりません。社会の不正を糺すために今後も常識にとらわれない政治活動に邁進していく覚悟です。

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デイリー新潮編集部