JAグループに絶望感が漂い始めている。減収減益が続く縮小再生産から抜け出せなくなっているのだ。ダイヤモンド編集部の独自試算で、全国の農協が5年後に合計1700億円の減益ショックに見舞われ、207農協が赤字に転落することが分かった。減益の影響が大きい「ワースト30」をリストアップしたダイジェスト版をお届けする。(ダイヤモンド編集部副編集長 千本木啓文)


JA上部団体に農協組合長ら400人が反旗!「上が下を搾取する」ビジネスを徹底批判するアンケート大公開


1700億円の大減益ショック
赤字転落要因は、共済の営業自粛と賃上げ

 農協の5年後の収益を独自に試算して作成するJA赤字危険度ランキングは、ダイヤモンド編集部の恒例企画だ。過去の試算では、百数十の農協が赤字となってきたが、今年は、過去最多の207JAが赤字に沈む結果となった。

 その要因は大きく三つ、(1)共済(保険)事業の減益、(2)農林中央金庫(農中)の減配、(3)職員の人件費の高騰――である。

 三つの減益要因を踏まえた試算では、5年後の農協の減益想定額は合計1705億円に上った。これは大げさな額ではない。農協の司令塔であるJA全中は、22年度から4年間の農協の減益額が合計1557億円に上るとのシミュレーションを組織内で示している(リストラなど収益改善策を行わない場合の試算結果)。

 大幅減益を打ち返す成長戦略を持っている農協はごく一部だ。金融事業が苦しくなる中、頼みの綱は農業関連事業だが、それすら赤字に沈んでいる農協が多い。

 農協の利益よりも自組織の保身ばかり考えている上部団体も頼りにならない(特集『組合長165人が“辛口”評価 JA上部団体の通信簿』の予告編『JA上部団体に農協組合長ら400人が反旗!「上が下を搾取する」ビジネスを徹底批判するアンケート大公開』参照)。近隣農協を救済合併するほど体力のある農協は少ない。

 ATMなど一部の機能のみを残して農協がなくなる“空白地帯”が生まれ、広がる未来が現実味を帯びてきている。

 489農協の経営状況を網羅した「JA赤字危険度ランキング完全版」については、特集『儲かる農業2024 JA農水省は緊急事態』の#1『過去最多207農協が赤字転落!JA赤字危険度ランキング2024【全国ワースト489・完全版】』で詳報している。

Graphic:Daddy’s Home, Data by Takayoshi Koumi