米司法省は8日(日本時間9日)、ドジャース大谷翔平投手(29)の元通訳、水原一平被告(39)が大谷の口座から約1700万ドル(約26億4400万円)を盗んだとする銀行詐欺などの罪を認め、司法取引に応じたと発表した。連邦地検は刑の軽減を申し入れる。水原被告は14日(同15日)に罪状認否のためカリフォルニア州の連邦地裁に出廷する。

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 プレーボールから1時間ほどが経過していた。試合展開で何かがあったわけでもないのに、記者席がざわついた。司法省が水原被告と司法取引が成立したと発表。米国でも大注目の“水原問題”に大きな進展が見られた。

 さらに異変が起きたのは試合後だった。本来、選手の取材はクラブハウスで行われる。日米メディアは通路で準備が整うのを待っていたが、列の先頭にいたド軍専属の地元放送局「スポーツネットLA」の美女リポーター・ワトソンさんが大きな声で言った。「今日はダメみたい!」。理由は不明だったが、報道陣はいつもロバーツ監督が会見を行うインタビュールームに移動した。指揮官に水原被告に関する質問をする現地記者もいた。

 会見が終わると、続いて決勝弾を放ったT・ヘルナンデスが私服に着替えた状態で現れた。さらに先発で3勝目を挙げたストーンも登場。ヒーローとはいえ選手がインタビュールームで取材を受けるのは開幕戦など特別な試合以外では珍しい。実はそうしているうちに、他の選手は続々と帰路についていた。

 会見が終わって部屋を出ると、女性の球団広報が告げた。「クラブハウスには入ってもいいけど、大谷はしゃべらないわよ」。入ってみると、大谷はもちろん、選手はほとんどいなかった。普段通りに開放されていれば、大谷にも水原被告のことを聞こうとする人がいたかもしれない。リスクを察知した“ド軍のカーテン”が事態の大きさを表していた。(中村 晃大)