2023年11月に海外専売車種としてフルモデルチェンジを果たしたトヨタ カムリ。カムリの二大市場である中国にて、その真価を試しました。

先代の完成度をさらなる高みへ!? カムリの二大市場である中国で試乗

 日本では先代となる10代目を最後に生産終了となったトヨタ「カムリ」。
 
 一方で2023年11月には海外専売車種としてフルモデルチェンジを果たしています。
 
 米国や中国などで販売されますが、今回は中国でその真価を試しました。

 1980年に「セリカカムリ」として誕生したカムリは、2023年11月に通算11代目となるフルモデルチェンジを果たしました(米国や中国では9代目)。

 プラットフォームは先代同様に「GA-K」となる一方、日本では2023年末で販売終了となり海外専売車種となっています。

 またアメリカ市場ではパワートレインがハイブリッドのみであったりと、大胆な販売戦略が展開されています。

 中国ではA25A-FXS型2.5リッター直列4気筒直噴エンジンとM20A-FXS型2.0リッター直列4気筒直噴エンジンの2つをハイブリッド用として揃え、これに加えてM20A-FKS型2.0リッター直列4気筒直噴エンジンを搭載する純ガソリンモデルの3種類を選択肢として揃えています。

 今回は2.0リッターハイブリッドのスポーツグレード、「2.0S 運動版」を試乗しました。

 基本的なシルエットは先代のキャリーオーバーとなりますが、フロントマスクは最新の「ハンマーヘッド」形状を取り入れたり、テールライトが「コの字」形になっていたりと、多くの点で刷新されています。

 また、細かい点ではリアウィンドウからCピラーにかけて羽上げられたラインがより長くなっており、視覚的により余裕のあるデザインに見えるように仕立て上げられています。

 全体的なフォルムはロー&ワイドなままであり、フォーマルさとスポーティさの両方を兼ね備えた新世代のカムリとなります。

 今回のフルモデルチェンジから中国向けとそれ以外の市場向けで、内外装の作り分けが顕著となりました。

 まずはフロントマスクですが、中国ではスポーツグレード「SE」「XSE」にブラックグリルが特徴的なフェイス、標準グレード「LE」には全面ボディ同色でグリルレスな雰囲気を漂わせるフェイスの2系統が用意されています。

 一方で北米向けではベースグレード「LE」が無塗装のブラックグリル、「SE」では光沢仕上げのブラックグリルやインテーク、それにフロントカナードの追加。

「XLE」では「LE」をベースにグリルをガンメタリックに塗装、そして「XSE」では「SE」をベースにグリルをボディ同色に塗装と、グレードと仕向地による違いが現れています。

 内装も中国向けは独自の設計となっており、北米仕様では12.3インチ(LE、SEでは8インチ)のセンターディスプレイをダッシュボードに埋め込み、その下にエアコンなどを操作する物理ボタンを配置。

 対して、中国仕様ではディスプレイが外に突出しており、その下のボタンは木目調加飾のタッチパネルとなっています。

 実際に使ってみると手触りはとても良いものの、日産「アリア」のように物理的フィードバックを返す「ハプティックスイッチ」ではないため、少し使いづらいとも感じてしまいました。

 また、エアコン吹き出し口の意匠がダッシュボードの中心を貫くラインの直線上にあるのに加え、メーターディスプレイとフードの形状が四角いのも中国仕様だけの特徴です。

 これらの違いは中国の消費者の好みを反映させたものとしており、中国国内メーカー車種が勢いを増す中、より中国市場に訴えかける設計を実現させた形となります。

 先代と同じプラットフォーム、ボディもそこまで大きな変更が加えられなかったということは、トヨタ的には先代モデルの時点で完成度に自信を持っていると解釈できます。

さて、いよいよ新型「カムリ」に試乗! どんな感じ?

 先代の良さを受け継ぎ、走りと快適性においてさらなる磨きを加えたということが実際に運転してみてまず感じました。

 スポーツグレードのためなのか、足回りは硬めで、コーナリングや直進路においてしっかりと思うがままに応答してくれます。

 かといって快適性が失われているかというとそうではなく、高速巡航時でも安定した走りを見せてくれるのはさすが日本車と言ったところです。

 エアコンやインフォテインメント周りなどの運転中に操作する箇所の応答性も良く、運転の妨げになるようなストレスは感じられません。

 運転モードをスポーツモードに切り替えることでアクセルのレスポンスは向上、エンジン音はより車内に響き渡るようになります。

 一方で、走りの面においてはノーマルモードと大きな違いはなく、少々物足りなさを覚えてしまいました。

 シフトレバーをDレンジから横へスライドさせることで、マニュアルモードでのシフト操作が可能となります。

 しかし、これは大半のトヨタ車種に共通していることですが、手前でシフトダウン、奥でシフトアップする操作は体感的に分かりづらい印象を受けました。

 個人的には加減速する際に感じられるGの方向と同じく、手前に引くことでシフトアップ、奥に押すことでシフトダウンのほうがより直感的な操作になるのではないかと思います。

 トランスミッション自体は電気式無段変速機(E-CVT)を採用、燃費や経済性においては抜群の性能を発揮しますが、一方でマニュアルモード時の変速の「モッサリ感」は否めません。

 加速は良いものの、スポーティな雰囲気の演出に欠かせない「加速音」のダルさはいかにもCVTという印象を受け、少々残念にも思いました。

 先述のシフト操作の件と合わせて、新型カムリのスポーツ走行は爽快な楽しさをもたらしてくれませんでした。

 ただ、北米仕様のスポーツグレードにはパドルシフトが装備されており、ダイレクトなシフト操作が可能です。

 パワートレインも2.5リッターハイブリッドとのことで、もしかしたらこの組み合わせならよりスポーティで心地よい走りが体感できるのかもしれません。

 また、スポーティな走りを求めずとも、実用的な領域においては十分に広い車内、快適な足回り、そして優れた経済性をもってして非常に完成度の高いセダンと言えます。

 カムリの二大市場のひとつである中国では中国ブランドのEVが好調で、日本や欧州ブランドは窮地に立たされています。

 その中で、中国ブランドが誇示する「目に見えてわかりやすい要素」よりも、日本ブランドはクルマ本来の本質的な要素で攻め込む姿勢を見せています。

 その中で、新しくなったカムリが中国でどう評価されるかには引き続き注目したいと思います。