英国の自動車評論サイト
日本の道路の左側通行、車の右ハンドルは、英国を手本にされたといわれている。日本の自動車が世界的に優れていることは間違いないが、歴史的に見れば、英国が“先輩”になる。
自動車雑誌の「オートカー(AUTOCAR)」が、英国では1895年に創刊されていることも、日本人にとっては驚きだろう。英国の自動車評論サイトは日本の自動車をどのような見方をしているのだろうか。
現地では、日本にはない「マツダ2ハイブリッド」が販売されている。これは、トヨタ欧州子会社の「ヤリス ハイブリッド」をベースにマツダブランドとして展開するOEMモデルである。
2022年5月に初めて販売され、マツダ独自の五角形のグリルを取り入れるなどした改良バージョンが2024年3月に発売されたばかりであるので、この車の評価がどうなっているのか、いくつかの自動車評論サイトの概評を見てみたい。
オートカーの評価「3.5点」
ひとつめの「オートカー(Autocar)」はまず、日本の自動車メーカー2社の提携について、「このような取引は恥ではない」し、マツダにとって
「比較的小規模なメーカーとして自社開発が不可能な実証済みのハイブリッド技術や小型車の販売拡大に役立つモデルへのアクセスが可能となる」
トヨタにとっては「歓迎すべき収入源になる」と前置きしている。
よりマツダらしい装いとなったこの新型マツダ2ハイブリッドに、5点中3.5の点数をつけ、「正確にはマツダ2ではないが、効率的で経済的で楽しいスーパーミニ」と総評した。長所には、
・効率的なパワートレインによりリーズナブルなランニングコストを実現
・驚くほどシャープなハンドリングと状態のいい道路を走る楽しさ
・トヨタのエンジニアリングとマツダのデザイン要素がうまく融合
短所には、
・このクラスの他の車のほうが運転しやすい
・トヨタのヤリスは基本的に同じ車でそちらのほうが少し安い
を挙げている。短所については、それほど目を引くものではないが、本文では擬人化表現が面白い。トヨタ生まれのマツダ2ハイブリッドを「マツダ2」の「養子となった兄弟」と表現している。
「マツダ2ハイブリッドが養子であるという事実を隠すことはできないものの、どこから来たのかを解明するために親子鑑定を行う必要はないが、優れた遺伝子を持っていることは疑いの余地がない」
養子縁組が日本に比べて一般的な英国ならではのユーモアといえるかもしれない。
カー・マガジンの評価「3点」
ふたつめの「カー・マガジン(car magazine)」は、
「ヒロシマ(マツダの本拠地)を装ったヤリス」
「ヤリスのクローン」
に5段階評価で3をつけている。長所を、
・まばゆいほどの経済性
・ミニパッケージに収められたレアなハイブリッドスキル
・頑丈なつくり
とし、短所を
・より安価なトヨタ ヤリス ハイブリッドとあまり変わらない
・ときめかない
と記した。
何にときめかないかというと、インテリアである。問題はないものの、室内はかなりプラスチック的としている。フィット感と仕上げの品質については保証できるといいつつ、味気なさを感じるようだ。
パーカーズの評価「3.4点」
三つめの「パーカーズ(PARKERS)」は、5点中3.4点をつけている。長所は、
・優れた経済性と低CO2
・クレバーなハイブリッドパワートレインがうまく機能
・作りがしっかりしていて丈夫で耐久性がありそうな感覚
短所は、
・ヤリス ハイブリッドのほうが安い
・頭上空間を奪うガラスルーフ
・現在販売されている最もエキサイティングな車ではない
である。エキサイティングではないのは、やはりインテリアが「機能的だがしゃれっ気なし」のせいのようだ。
「デザインのセンスにはほとんど欠けており、インテリアを絶賛する人はいないだろうが、しっかりとした作りで目的に適していることは否定できない」
と評される。ここでも、ソフトタッチな素材が求められていた。
短所の「頭上空間を奪うガラスルーフ」というのは、フルレングスのサンルーフのことである。室内に光を入れるものの、後部座席の頭上スペースが大幅に減る
「もろ刃の剣」
と表現されている。冬場は特に、太陽光が不足する英国だが、頭上スペースが広いほうが開放感があっていいのは皆に共通することである。
ユーモアと批判のバランス
いずれの自動車評論サイトでも弱点としていわれているのが、
「トヨタのヤリスとほとんど変わらない」
「インテリアのセンスが悪い」
ということだった。
英国では、車のインテリアにソフトタッチを好む傾向があるようで、日本的な硬質で無機質なデザインは魅力的に映らないようである。
しかし、日本以上にガソリン価格が高い英国では、ハイブリッドならではの“節約性”が支持を得ているので、マツダ2ハイブリッドの機能自体は評価されている。
いずれにせよ、英国の車のレビューでは、車を擬人化したりユーモアを加えたりしながらも、ストレートな批判も行われている。