南アフリカにある「野生サイ保護区(Care for Wild Rhino Sanctuary)」でリハビリ中のサバンナシマウマの赤ちゃん「モジャジ」とミナミシロサイの赤ちゃん「デイジー」は、ボールで遊ぶ時も、走り回っている時もいつも一緒だ。夜も寄り添って眠る。「本当にかわいいですよ」と、保護区の設立者で2匹を育ててきたペトロネル・ニウアウト氏は話す。保護されていなければ2匹はおそらく死んでいた。しかし今、動物保護活動家の支援と、普通ではありそうもない友情に支えられ2匹が野生に戻れる可能性もでてきた。

 モジャジはたった1匹でクルーガー国立公園をさまよっていたところを保護された。モジャジとは雨を降らせる特別な力を持つとされる南アフリカ、モジャジ族の首長「雨の女王」のこと。豪雨のあと発見されたため、この名が付けられた。モジャジは保護された時、体に付いたダニが原因で貧血を起こしていた。

 デイジーが保護されたのはその数日後。生まれてから12時間ほどしか経っておらず、へその緒を付けたままで感染症を起こしていた。母親は牙を狙う密猟者に殺されたようだった。

「遊び」は大事

 シロサイもシマウマも生後1時間以内に立ち上がれる。とはいえ、親の庇護は必要だ。シロサイの場合、2〜3歳になるまでは母親と過ごす。シマウマが自立できるのも生まれてから1年後だ。独り立ちできるまで、子どもは母親からエサをもらい保護され、仲間との適切な社会行動を学んでいく。

 野生の中でシロサイとシマウマが密接に関わることはない。それでもニウアウト氏が2匹を一緒にしたのは、本来ならば母親から与えられるはずの安心感を2匹でいることで補えると考えたからだ。

 2匹は体を寄せ合って寝るのが好きだとニウアウト氏は言う。「互いの息づかいや心音を感じて安心するのでしょう」

 さらに2匹でいると、「遊び」を学べるという。「遊びから動物は社会的行動を学び、自分と相手の間にある境界線を知り、身体能力を養います」と、米シンシナティ動物園でサイを研究するテリー・ロス氏は言う。子どもの頃から別の動物と交流を持っていれば、「おとなになった時、高い適応力を身に着けていると思います」

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