海運大手3社の2024年3月期連結決算が8日出そろい、全社が大幅経常減益となった。3社の共同出資会社が運営するコンテナ船事業において、前期までのコロナ禍の物流逼迫(ひっぱく)に伴う空前の好市況が沈静化し、需給が軟化して業績が下がった。ただ、コロナ禍前の水準に比べ、各社の業績は堅調に推移している。

8日発表した日本郵船の24年3月期連結決算は、経常利益が前期比76・5%減の2613億円となった。過去最高益を更新した前期に比べ減益だが、過去3番目の高水準となった。中東情勢の緊迫化やパナマ運河の渇水などの問題が次々と起きたが、「利益は期初予想より高く着地し、中期経営計画は良い滑り出しとなった」(曽我貴也社長)。

足元の中東情勢緊迫化に伴う紅海を迂回(うかい)した運航によるコンテナ船需給の引き締まりや円安進行も、各社の利益を押し上げた。

25年3月期業績予想は、商船三井と川崎汽船が増収営業増益を見込む。好調が続く自動車船事業がけん引する。日本郵船は日本貨物航空(NCA)の売却を織り込み、減収営業減益の予想とした。経常利益は3社とも減益予想とした。

コンテナ船は新造船の増加により供給圧力は依然高いが、9月末まで紅海を迂回する運航が続く前提で、船腹需給は一定程度引き締まると見込む。

各社は堅調な業績を背景に、自社株買いなどの株主還元や投資計画を上積みする。日本郵船と商船三井は24年3月期の期末配当を引き上げた。川崎汽船は27年3月期まで5カ年の投資額を1100億円引き上げ、液化天然ガス(LNG)船などへの投資を増やす。商船三井も「業績は想定を上回っており、投資余力が増えた」(橋本剛社長)としている。