今年の巨人は監督が阿部慎之助氏になったことで、選手の起用法が大きく変化。特に、ファンの間で賛否両論渦巻いているのが「主力を担うべき左打者への扱い」だ。
本記事では、これまでプロ野球から高校野球まで野球関係の記事や書籍を幅広く執筆している野球著作家のゴジキが、「大城卓三と秋広優人の現状」について考えてみたい。
◆開幕前は大いにに期待されていた「大城と秋広」
今期の巨人打線で軸となるのは、右打者では坂本と岡本。そして左打者では、丸を除くと長打が見込める選手は大城と秋広。彼ら二人がより飛躍するシーズンだと思われていた。しかし、残念ながら開幕してから今まで出場機会に恵まれていない。
「右投げ左打ち」で球史に残る活躍を見せた阿部氏からすると、両選手の現状には満足していないのだろう。
◆「打者」としても大城を起用すべき
大城に関しては、ライバルの小林誠司が投手陣を牽引し、リーグトップクラスの投手陣を形成しようとしている影響も少なくない。
また、今シーズンは岡本、吉川尚輝、門脇誠、坂本といった内野陣が鉄壁のディフェンス力を誇るため、“守るチーム”としても小林の存在が欠かせなくなっているのかもしれない。
しかし、疲労によるパフォーマンス低下を防ぐためにも、守備やリードの面を多少目を瞑り、大城を起用していくべきではないか。3年連続二桁本塁打を記録する大城の打撃力を活かすためにも、一塁手として起用するのもアリだろう。
攻守においてチームの要だった阿部氏からすると、物足りなく感じる可能性は高いが、大城が貴重な戦力なのは間違いない。今シーズンはオフにFAも行使できることから、本人の意にそぐわない起用を続けると、他球団に移籍する可能性もあり得る。実力相応の起用をしてほしいところだ。
◆秋広への評価は「辛辣すぎないか」と思ってしまう
昨年、二桁本塁打を記録した若干21歳の秋広も、阿部新監督から洗礼を浴びている。身長2メートルの体躯から豪快な打撃を繰り出す一方で、器用さも兼ね備えている若手のホープだ。松井秀喜氏の代名詞「背番号55」を背負うことからも、球団側からも高く期待されているはず。
近年の巨人は左打者の長打力不足に悩まされていたものの、この秋広が台頭したことにより、解消されたかのように思えた。
しかし、阿部氏は他の選手と比較しても辛辣に思える評価を下した。2軍で開幕を迎え、5月7日にようやく1軍昇格したが、途中出場など中途半端な形で20打席しか与えられなかった。にもかかわらず、5月20日にまたもや2軍降格の憂き目に。
チャンスそのものが与えられていないため、一向に調子が上がってこないのはやむを得ない気もしてしまう。できればもう少々長い目で見てほしいものだ。筆者も含め、継続的に秋広の姿が見たいファンは多いのではないだろうか。
投手とは異なりほぼ毎試合出場することから、中長期的にコアとなる選手の育成も視野に入れた起用法がポイントになっていく。現在、高卒4年目を迎えた秋広だが、試練の時期と言っていいだろう。素材は間違いなく一級品のため、かつての先輩選手たちのように、この状況を乗り越えてほしい。
<TEXT/ゴジキ>
【ゴジキ】
野球評論家・著作家。これまでに 『巨人軍解体新書』(光文社新書)・『アンチデータベースボール』(カンゼン)・『戦略で読む高校野球』(集英社新書)などを出版。「ゴジキの巨人軍解体新書」や「データで読む高校野球 2022」、「ゴジキの新・野球論」を過去に連載。週刊プレイボーイやスポーツ報知、女性セブンなどメディアの取材も多数。Yahoo!ニュース公式コメンテーターにも選出。日刊SPA!にて寄稿に携わる。Twitter:@godziki_55