プレジデント 2024年5月17日号 掲載

■ゆとり世代(20歳〜37歳付近)【原則】責任を感じさせない

ゆとり世代はなぜ出世が嫌いなのか

ゆとり世代(1987〜2004年生まれ)は、それより上の世代とはまったく異なる職業観を持っています。バブル世代は働けば働くほど儲かったから、氷河期世代は潜在的な失業への恐怖心から、仕事中心の人生を歩んできました。しかし、ゆとり世代にとって、仕事は日常の一部です。

「え、残業ですか? すみません、今日は習い事があるので帰ります」
「昇進は辞退します。役職が付くと責任が大きくなるじゃないですか。そういうの、重いんですよね」

なぜこのような差が生まれたのでしょうか。それは彼らが受けてきた教育と世相に理由があると思われます。ゆとり世代は、02〜11年の義務教育を受けました。詰め込み型教育の反省から授業時間が大幅に削減され、体験学習や調べ学習など点数のつかないカリキュラムが新設されました。

人はみんなが自分らしくあっていいという個を尊重する育て方をされた人たちに「社会人なんだからこれくらいはあたりまえ」「仕事なんだから黙ってやるべき」といった理屈で何かをやらせるのは無理があります。自分ではない誰かを物差しにされたり、競わされたりするのがとにかく苦手なのです。他人を出し抜き自分が有利になることに罪悪感を覚える人も多いようです。

■ゆとり世代に軽蔑される上司の特徴

バブル世代は金を稼いでカッコイイ車に乗りたいとか、おしゃれをして遊びに行きたいとか、高級な店でおいしいものを食べたいといった欲望が、仕事を頑張るモチベーションでした。

一方ゆとり世代は、車にもブランド品にも大した興味を示さず、仕事が終われば家に帰ってゲームをし、休日は趣味の仲間と遊んだり近所を散歩したりするのを楽しみにしています。物心ついたときから景気は右肩下がりですを熟知しているのです。

氷河期世代は社会に出た直後に失う怖さを目の当たりにしたので、職やお金に対する執着心がありました。しかし、ゆとり世代は失われた状態からスタートしたのです。会社を頼って人生をすり減らしても報われない、自分が損をするだけという考え方です。

もともとお金のかからないシンプルなライフスタイルを実践しているし、その気になったらフード配達でもスキマバイトでも稼げる手段はたくさんあります。だから「この職場で消耗するのはたくさんだ」と感じたら、あっさり辞めてしまうのです。

また、ゆとり世代は男女雇用機会均等法施行から20年を経て社会に出てきた世代であり、男女平等を知識ではなく常識として理解している人たちです。バブル・氷河期世代が油断するとつい口を滑らせてしまう「男だったら」「女にしては」などのステレオタイプやジェンダー差別がにじむフレーズに、強い違和感や拒否感を抱いています。

そうした評価や言葉に対して、ゆとり世代が真っ向から反論してくることは少ないでしょう。自分の価値観を理解しない人を相手に議論をしても意味がないと思っているからです。しかし、心は静かに離れていきます。生ぬるい返事をしながら心の中で軽蔑し「考え方がキモイ。キライだ」と思われる。そうなると、関係修復は困難です。