後藤:そうなってしまうと、投資や資産形成に瞬間的なブームが起こっても、結局、痛い目にあってしまう人が続出して、長続きはしません。
ですので、長い目で健全に資産形成の文化とか、金融リテラシーが広がってほしいなと思っています。
後藤氏「投資のお金はガソリンでしかない」
田内:僕自身、銀行にも預金はしているのですが、銀行員から「預金だけではもったいないので、投資しませんか」とすすめられることがあり、そういう誘いにすごく違和感を覚えています。なぜなら、預金に利息がつかず、結果的にもったいないことになってしまっているのは、僕をはじめとした預金者のせいではないからです。
田内 学(たうち・まなぶ)/社会的金融教育家。1978年生まれ。東京大学工学部卒業。同大学大学院情報理工学系研究科修士課程修了。2003年ゴールドマン・サックス証券株式会社入社。以後16年間、日本国債、円金利デリバティブ、長期為替などのトレーディングに従事。2019年に退職後、執筆活動を始める(撮影:今井康一)
本来、銀行というものは、資金ニーズのある相手にお金を融資し、その対価として金利を稼ぐのが役割です。でも、今の日本では大企業だけでなく中小企業も長年投資を控えてきたこともあり、内部留保金が潤沢で、あえて銀行から融資を受ける必要がない会社が増えています。もちろん余裕のないところもあるのですが、全体としては新規の資金ニーズが不足しているように思います。
その結果、資金が銀行の金庫に眠ったままになってしまって、利息を預金者に還元できない状況になってしまっているわけです。
こういう資金需要がない状況で、僕たちが株などのリスク資産に投資をしたところで、実体経済なんて変わらないと思ってしまうのです。