―――後藤さんは、アメリカ経済の話を本の中でも頻繁に触れられていますが、具体的にはどういうことに注目していらっしゃいますか。

後藤達也(以下、後藤):まずは、アメリカ経済の強さですね。この1〜2年間、記録的なインフレに見舞われて、利上げを重ねなくてはいけない状況になってしまったにもかかわらず、リセッションには陥らなかった。確かに絶好調期からは少し減速したかもしれませんが、あの国の底力の強さを改めて感じさせられた2年間でした。

経済が好調に推移しているので、利下げが遅れて株価には逆風になるという話もありますが、俯瞰すればとにかく強いと感じます。

今年1年に関して言うと、いろいろなリスクはあると思いますが、やはり大統領選挙の行方が最大のリスク要因でしょう。トランプになるかどうかで、株価や経済だけにとどまらず、地政学的にも、環境対応にしても、ありとあらゆることが劇的に変わってしまう可能性があります。バイデンとどちらが大統領になるかは、壮大な不確実要因ですね。

仮にトランプになると仮定しても、正直どういう世界になるかわかりません。8年前にもトランプになったらなるだろうと言われていた世界があって、そのとおりになった部分もあったし、いろいろ問題が起こったりもしました。でも、少なくとも経済は好調に推移し、株価はめちゃくちゃ上がりました。

事前には、「もしトランプが大統領になったら、株価が暴落する」と言われていたにもかかわらずです。ですので、本当に壮大な不確実性ですね。

後藤氏「トランプは”手あたり次第”の可能性も」

後藤:トランプはアメリカの製造業が大好きなので、大統領に返り咲いたら、円安・ドル高基調もガラッと変わるかもしれません。

前回、大統領だったときもFRBに利下げやマイナス金利を要求したぐらいなので、ドル高をとにかく腕力で是正させようと、介入でもなんでも、手あたり次第の手を打ってくる可能性もないわけではありません。もしそうなれば、当然、円安・ドル高が激しく調整されることになるでしょう。

―――田内さんは何か、アメリカだけでなくグローバル指標で注目されているものはありますか?

田内学(以下、田内):この分野は後藤さんが、プロとしてずっと見てらっしゃるので、今のお話だけで十分だと思います。

プロと言えば、僕自身が心がけていることが1つあります。世の中はいろんな分野に細分化されていて、それぞれの分野に専門家がいるのですが、経済やお金の話に関しては、みんななんとなくボヤっとは知っているので、それっぽく聞こえるけれど間違った情報を発信してる人が多いと感じています。