和歌山県田辺市たきない町の南和歌山医療センターは、がんの高精度な治療ができるという新しい放射線治療装置を導入した。放射線の照射がさまざまな角度から適切にできるなど機能が向上。治療効果が期待できる上、治療時間の短縮で患者の負担が軽減できるという。
 同センターは2011年から、腫瘍に対して集中的に放射線を照射することができる「強度変調放射線治療(IMRT)」を始めた。紀中や紀南では、この治療をする唯一の医療機関となっている。
 新たに、放射線治療の最新装置というバリアン・メディカル・システムズ(東京都)製のX線放射装置「トゥルービーム」を導入した。
 同センター放射線科によると、回転することで放射線をさまざまな角度から放射できるのに加え、放射線量が増え、より治療効果が期待できる。これにより、これまでなら30分から1時間ほどかかっていた1回当たりの治療は、15分ほどに短縮できる。放射線が余分な所に当たらないことで、被ばく量が少なくなることも見込まれるという。
 この装置には、転移性脳腫瘍など頭部病変に対応する「ハイパーアーク」を搭載しており、これまでの装置では治療が難しかった多発転移性脳腫瘍に対しても、同時に強力な局所治療ができ、短時間での治療も可能になるという。
 3月中旬から稼働し、前立腺がんの患者など32人(16日現在)が治療を受けている。
 放射線科の濵瑞貴医師(34)は「手術も含め、患者にとって最善の治療を提供する必要がある。和歌山県南部でも都市部と同じように良い治療を受けてもらえるよう導入した」と話している。
 16日には南和歌山医療センターで、放射線治療をテーマにした公開講座と新しい放射線治療室の内覧会があり、約50人が参加した。濵医師が放射線治療や導入した装置について説明。内覧会では装置を紹介し、治療の流れについて説明した。
 60代の女性は「がんの手術を繰り返しているので、治療を考えるのに参考になればと参加した。進化している放射線治療について教えてもらえて良かった」と話した。