「こどもの日」は“男の子のお祝いをする日”、「ひな祭り」は“女の子のお祝いをする日”と認識している人も多いでしょう。「こどもの日」に女の子のお祝いをしてはいけないのでしょうか?

そんな「こどもの日」について、「All About」暮らしの歳時記ガイドの三浦康子が解説します。

(今回の質問)
「こどもの日」は男の子をお祝いする日? 女の子のお祝いをしてはいけませんか?

(回答)
「こどもの日」は男女の別なくこどもの幸せを願う祝日なので、性別を問わずお祝いをしましょう。男の子の節句とされる「端午の節句」も、もとは年齢や性別を問わず楽しめる日です。

どういうことなのか、以下で詳しく解説します。

■「こどもの日」は“男の子の日”? 女の子を祝ってもいい?
5月5日が「こどもの日」になる前は、「端午の節句」の日でした。

「端午の節句」は別名「菖蒲(しょうぶ)の節句」といい、老若男女が菖蒲を用いて邪気払いをする日として始まりました。やがて、菖蒲が尚武に通じることから武家社会で男の子の成長を願うようになり、江戸時代に五節句の1つになって、祝日として大衆化。明治時代の改暦の際に五節句は祝日ではなくなりましたが、現在でもその風習が広く親しまれています。

その後、昭和23(1948)年に、「こどもの人格を重んじ、こどもの幸福をはかるとともに、母に感謝する」という趣旨で「こどもの日」が国民の祝日になりました。

つまり、5月5日には、年齢や性別を問わず邪気払いをしたり、男の子の健やかな成長を願ったりする「端午の節句」と、男女の別なくこどもの幸せを願う「こどもの日」が共存しているのです。
なので、「こどもの日」は女の子も男の子もお祝いをしましょう。こどもの日パーティーをしたり、柏餅やちまきを食べて鯉のぼりを作ってみたり、菖蒲湯に入ったり……楽しめることがたくさんあります。

■「こどもの日」と「ひな祭り」は何が違う?
「ひな祭り」は女の子の健やかな成長を願うお祭りです。5月5日の「端午の節句」が江戸時代に男の子のお祝いになったことから、3月3日の「桃の節句」が女の子のお祝いになり、ひな人形を飾ってお祭りをするので「ひな祭り」と呼ばれるようになりました。

3月3日はもともと「上巳(じょうし)の節句」といい、老若男女が邪気払いをする日で、人形(ひとがた)に自分の穢れを移して水に流したりしていました。「端午の節句」が老若男女の邪気払いをする日だったのと同じですね。また、ひし餅やひなあられには「こどもの健やかな成長」が込められているので、3月3日を男の子が楽しんでもいいのです。

日本の行事にはさまざまな要素が結びついているため、解釈のしかたも1つではありません。でも、全ての物事に幸せを願う気持ちが込められています。特に、こどもにまつわる行事が多いのが特徴なので、性別を問わず幸せを願う行事を楽しんでください。

この記事の筆者:三浦 康子
和文化研究家、ライフコーディネーター。わかりやすい解説と洒落た提案が支持され、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌、ウェブ、講演、商品企画などで活躍中。様々な文化プロジェクトに携わり、子育て世代に「行事育」を提唱している。著書、監修書多数。